公募研究
本研究では、原子炉で試料に中性子を照射しハロゲンを特定の希ガス同位体に変換した後、希ガス質量分析により測定することで、かんらん石のメルト包有物に含まれる極微量のハロゲン元素を定量することを柱としている。しかし利用していた京都大学の研究炉KURが、H25年度中に整備工事に入りその後の再稼働認可取得にも時間がかかる見込みとなったため、数個の試料の照射をすませたところで、国内で利用可能な原子炉が存在しなくなった。そこで米国オレゴン州立大学の研究炉OSTRでの照射と、英国マンチェスター大学での希ガス同位体分析を行った(繰り越しによりH26年度に実施)。H24年度度までは伊豆小笠原北部の諸島と、伊豆半島で採取した火山岩中のかんらん石斑晶を分析したが、本研究期間はその背弧域にあたる雁行海山列でドレッジにより採取された溶岩からかんらん石斑晶を分離し、ハロゲン並びに希ガス分析を行った。希ガス同位体比については火山フロント上の試料と同様に、マントルとほぼ等しい3He/4He比が得られた一方で、40Ar/36Ar比には火山フロント上より背弧側で系統的に高いという、島弧横断方向の変化が見られた。またハロゲンはほとんどの試料でマントルに近い組成であったが、背弧側のいくつかの試料でのみ、ヨウ素に極めて富む、海底堆積物中の間隙水に特徴的に見られる組成が得られた。これらのことから、(1)比較的低ハロゲン濃度で、かつ大気起源希ガスを含むスラブ由来流体が火山フロント直下から背弧域にかけてマントルウェッジに供給されているが、Heとハロゲンの特徴は、部分溶融の際にマントルに本来含まれる成分によってほとんど覆い隠されてしまっている一方で、(2)間隙水的な特徴を持つハロゲンを高濃度で含むスラブ由来流体が、主に背弧側で供給されているが、流体の総量としては多くない可能性が現時点では考えられる。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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