研究領域 | 地殻流体: その実態と沈み込み変動への役割 |
研究課題/領域番号 |
24109704
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
中久喜 伴益 広島大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (10263667)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 沈み込み帯 / 水輸送 / マントル対流 / マントル不均質 / スラブ / プルーム |
研究実績の概要 |
地球深部への水輸送と不均質構造を解明するため、これまで数値モデルの開発を行ってきた。本年度は、これまで開発してきた粒子法(Marker and Cell Method)を水輸送の方程式に応用した。この計算法では、マントルの層と海洋地殻の層を別々に取り扱うようにアルゴリズムを工夫して、沈み込んだ海洋地殻とマントルの間で水が人工的に拡散して深部に輸送されてしまう誤りを防ぐことが出来るようになった。これによって、非常に高い精度で水輸送を計算し、深部に運ばれる水の量を見積ることが可能になった。これにより、マントル対流と水輸送を結合したモデルの開発が完了し、水とマントル対流の相互作用をシミュレート出来るようになった。 このモデルを用いて、次のような地球科学的な問題について取り組んだ。(1) プレート間の結合強度の水輸送への影響、 (2) 下部マントルへ沈み込むスラブによる地球深部への水輸送、(3) スタグナントスラブからの脱水と相境界。これによって、水を多く含んだ蛇紋岩が運ばれる深度がにプレート間結合が大きな影響を与えること、下部マントルの含水率が低い場合でも水が下部マントルへほとんど輸送されてしまうこと、スタグナントスラブが下部マントルへ崩落する場合には、脱水が起こり、相境界面に水を多く含む層が形成されることなどが明らかになった。 また、沈み込み帯の運動学的観測についてのデータを解析し、沈み込んだスラブのダイナミクスと、同位体データの独立成分解析によって示されたIC2(過去に水と接触した物質)の分布が関連性を持つことが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マントル対流と水輸送を結合したモデルの開発が完了し、マントルダイナミクスの課題に応用できるようになった。また、開発した数値モデルを水輸送に関連した実際の問題について適用した。これは、当初の計画通りである。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、計画書の通り、次のような課題について研究を行う。(1) マントルの粘性・密度を通した水のマントルダイナミクスへの影響、(2) 下部マントルへ沈み込んだスラブと核・マントル境界域との相互作用によるプルームの発生、(3) マントル最深部における水の循環および不均質構造の発生。
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