研究実績の概要 |
以前我々は、コンドロイチン硫酸(CS)鎖中の特定の硫酸化配列が神経突起の伸長促進活性を有することを見出した。また、CS結合タンパク質として、アルツハイマー病に関わるReceptor for Advanced Glycation End-products (RAGE)を同定した。そこで本研究では、RAGEおよびCSが関わる神経突起の伸長メカニズムを解明し、さらにRAGE以外の機能性タンパク質についてもプロテオミクスの手法を用いて同定する。また、神経突起の伸長に関わるCSの機能性ドメイン(配列)についても単離・精製する。本年度は、神経突起伸長活性を示すCS-Dから新規オリゴ糖を7種類単離し、脳のCSを認識する抗CS抗体と反応することを見出した(Glycobiology 2013)。さらに、神経栄養因子を含めた様々な増殖因子と硫酸化の異なるCS鎖とのアフィニティを速度論的に解析した(Glycoconjugate Journal, 2013)。また、非酵素的に酸・アルカリを使用せずにCSをオリゴ糖に低分子化する新技術を開発し(Carbohydrate Research, 2013)、CS鎖中の機能ドメインの単離を加速させた。さらに、CS鎖をガラスの基盤に固相化し、CS鎖を含めたグリコサミノグリカン鎖のマイクロアレイを開発した(Analytical Biochemistry, 2013)。また、プロテオミクス解析によってCS鎖と結合する脳由来の新規タンパク質を複数同定した(未発表)。さらに、CSが関わる神経幹細胞の分化についての総説がJournal of Biological Chemistry (2012)に掲載され、ハイライトされた。 以上の研究成果を国際誌に原著論文を4報、総説1報を発表した。また、国内学会発表3回、国際学会での発表を1回行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画以上に進展している理由としては、査読有りの学術雑誌4編に論文が受理されたこと、総説1編および学会での発表も国内3件、国際学会1件にのぼるからである。また、CSが関わる神経幹細胞の分化についての総説がJournal of Biological Chemistry (2012)に掲載され、ハイライトされた。 さらに、神経突起伸長促進活性を示すCS-Dから、新規オリゴ糖を7種類単離し、それが脳に存在するCSを認識する抗CS抗体に認識されることを明らかにした(Mizumoto et al., Glycobiology, 2013)。また、神経栄養因子と硫酸化配列の異なるCSとの結合解離定数を明らかにし(Mizumoto et al., Glycoconjugate Journal, 2013)、機能性タンパク質の認識に硫酸化配列が重要であることを見出した。さらに、CS鎖をガラスの基盤に固相化し、CS鎖を含めたグリコサミノグリカン鎖のマイクロアレイを開発し (Takada et al., Analytical Biochemistry, 2013)、今後のCSを含めた多糖鎖と機能性タンパク質との網羅的相互作用解析を可能にした。さらに、非酵素的にかつ酸もアルカリも使用せず水と高温・高圧処理によって、CS鎖中の機能性配列を簡便に調製できる方法を開発し(Yamada et al., Carbohydrate Research, 2013)、今後の機能性オリゴ糖の大量調製に有用である。 上述した成果に加えて、未発表ではあるが、プロテオミクスの解析からCSと結合する脳由来のタンパク質を複数同定した。さらに、RAGEノックアウトマウスが誕生し、RAGEを過剰発現した神経芽細胞腫も樹立し、RAGEが関わる神経突起伸長の解析が可能となり、次年度の研究が益々加速することが予想される。
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