研究領域 | 統合的神経機能の制御を標的とした糖鎖の作動原理解明 |
研究課題/領域番号 |
24110503
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
武内 恒成 新潟大学, 医歯学系, 准教授 (90206946)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 再生医療 / 神経科学 / 糖鎖生物学 / 神経再生 / 神経発生 |
研究実績の概要 |
グリコサミノグリカンは、従来考えられてきたような静的な機能ドメインではなく、神経発生・再生および神経可塑性においては極めて動的な機能ドメインである。例えば再生においては、脊髄損傷時にはグリコサミノグリカンの劇的発現上昇がみられ再生阻害因子として機能する。我々が作成した“コンドロイチン硫酸(CS)合成酵素CSGalNAcT1(ChGn1)ノックアウト(KO)マウス”は、この脊髄損傷の修復回復が劇的に早い。このKOマウスにおける神経損傷修復では、軸索伸長阻害因子とされるCS量の減少が生じるのみならず、CS合成が抑制されるため別のプロテオグリカンの発現量が相補的に上昇し、神経細胞自律的な再生にも機能したためであった。つまり糖鎖発現にも動的かつ巧妙な調節機能がある。また、神経発生時には本研究課題平成24年中に、このKOマウスの大脳形成時に皮質層構造形成が遅れること(当研究グループ)、さらにはこのCSをリガンドとするIgスーパファミリー神経細胞接着分子のノックダウン(KD)により神経細胞の極性形成やパターン形成に異常をきたすこと(当グループと名大グループとの共同研究)なども新たに明らかになってきた。神経発生過程においてもその一断面を捉えると、グリコサミノグリカンは、受容体側の接着分子などとの機能相関を持ちながら、神経細胞極性決定や細胞移動などに動的な機能ドメインとしての役割を果たしていることが、さらにうかがえつつある。本研究では現在、グリコサミノグリカン発現制御の調節機構の解析、上流転写因子の解析、それらを人為的に制御する解析に着手している。さらに行動機能解析の観点からもKOマウスの行動テストバッテリーを継続させているとともに、KOマウスの臨界期形成なども進行している。神経機能の様々な観点において、動的な糖鎖の発現および制御機構をコンドロイチン硫酸を中心に捉えることを目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
コンドロイチン硫酸(CS)合成酵素CSGalNAcT1(ChGn1)ノックアウト(KO)マウスを中心とした、特に神経再生・脊髄損傷修復機構での生理学的なCSの意味やその制御機構を捉えることを主なる目的としていた。しかし、神経発生時に機能する免疫グロブリンスーパーファミリー接着分子(IgSF)の解析から、思いがけず我々のChGn1 KOマウスがこれら分子との機能相関から、発生時神経細胞極性決定にかかわることが明らかとなり大きな展開を示しつつある。また、これらKOマウスの解析から進めるべきところが、新たに簡易型のsiRNAによる遺伝子ノックダウン(KD)の実験系が脊髄損傷部において可能となった。これによりウイルスなどを用いたKDに頼らなくとも、容易に解析が進められるようになり、CSなどの制御にかかわる転写因子の解析などが順調に進展しているため。
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今後の研究の推進方策 |
これまで脊髄損傷修復を中心とした再生過程でのCSの機能とその制御系を中心に進めてきたが、発生学的な観点からの解析も進める。 またノックダウンシステムなどの新たな方法に関しても特許化や論文での公表を本研究課題中に可能な限り進めたい。 CSの発現制御だけでなく、CSを制御するときに機能相関がうかがえたエパラン硫酸系のノックアウトマウスなどの導入も急いでより解析を広げることも視野に入れている。
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