研究領域 | 統合的神経機能の制御を標的とした糖鎖の作動原理解明 |
研究課題/領域番号 |
24110505
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
安藤 弘宗 岐阜大学, 応用生物科学部, 准教授 (20372518)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 神経系ガングリオシド / 1分子イメージング / シアル酸 / 蛍光プローブ |
研究実績の概要 |
本年度は当初の研究計画に従い、中枢神経に高発現するb系列ガングリオシドであるGD3,GD2,GD1b,GT1b,GQ1bの五種の蛍光プローブの合成を開始した。24年度では蛍光分子が末端の中性糖に結合したGD2,GD1bおよび末端シアル酸残基に結合したGD3の合成の完了を予定していた。 まず、既に類似構造の蛍光プローブの合成の実績があるGD1bの合成に着手し、6位アミノ基修飾したガラクトースとジシアリルガラクトース、グルコシルセラミドを鍵中間とする合成戦略を立案し、GD1b蛍光プローブの合成に成功した。また、同様な合成戦略により、9位アミノ化シアリルガラクトースを蛍光導入ユニットとして用いることで、25年度に合成完了を予定していたGT1b蛍光プローブの合成を終えることが出来た。 一方、シアル酸2量体の末端シアル酸に蛍光分子が結合したGD3蛍光プローブの合成に向けては、鍵中間体となる9位アミノ化ジシアリルガラクトースの合成法を検討することから研究を開始し、高反応性シアリルガラクトース受容体および高反応性シアル酸供与体を活用する新しい合成法により、9位アミノ化ジシアリルガラクトースを合成することが出来た。この鍵中間体の合成法の確立により、次年度にはGD3およびGQ1bプローブの合成完了が見込める。また、GD2プローブの合成にむけては、鍵となる6位アミノ化ガラクトサミン供与体の合成検討を実施し、糖鎖構築に有効な分子設計の指針を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画では、本年度において3種のガングリオシド蛍光プローブの合成完了を予定していた。本年度はそのうちすでに2種のガングリオシドプローブ(GD1b、GT1b)の合成に世界で初めて成功しており、また、GD3に関しても間もなく合成を完了できる状態にある。最も合成の難易度が高いと予想されたGD3およびGQ1bの合成において共通する課題である9位アミノ化ジシアリルガラクトースユニットの合成に関して、本年度では有効な合成手法を確立することが出来たため、次年度内の合成完了の目途が立った。 また、GD2の合成では鍵中間体の分子設計の最適化を本年度内に終えることが出来たため、同様に次年度での合成完了が望める状態にある。 以上の理由から、本年度において、当初研究目的をおおむね達成できたと評価した。
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今後の研究の推進方策 |
ガングリオシドプローブの合成では、本年度に確立した9位アミノ化ジシアリルガラクトースユニットを用いて、GD3およびGQ1bのプローブ合成を完了する。また、GD2の合成では、6位アミノ化ガラクトサミンユニットを用いて合成を完了する。 合成を完了した各ガングリオシドプローブの機能検証(脂質ラフト親和性試験、抗体レクチン反応性試験、神経突起伸展活性試験)実施し、天然のガングリオシドとの機能等価性を生化学的、生物物理学的手法により評価する。その後、神経細胞膜でのガングリオシドの1分子イメージングを行い、神経細胞上に発現するタンパク質受容体(TAG-1、NMDAなど)との共局在を観察し、1分子レベルでの神経ガングリオシドとタンパク質受容体との親和性の解析を行う。
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