研究領域 | 統合的神経機能の制御を標的とした糖鎖の作動原理解明 |
研究課題/領域番号 |
24110507
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
岡島 徹也 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (20420383)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | Notch / Dystroglycan / glycosylation |
研究実績の概要 |
タンパク質ドメインの特異的な糖鎖修飾は、Notch受容体に代表されるように、細胞間相互作用を制御し、多様な発生プロセスを制御することが知られている。一方、発生プロセス終了後における神経組織においても、これらの特異糖鎖が機能する状況証拠はあるが、解析の多くは手つかずのまま残されている。そこで本研究課題では、タンパク質特異的糖鎖の神経組織における機能発現の分子機構の解明を目指した。昨年度は、神経組織に特異的な発現が認められる新規糖転移酵素Eogt-Lを中心に解析を進めた。モデル生物を用いたRNAiによるEogt-Lの機能解析が進行中に、他の研究グループから、Eogt-Lの遺伝子変異が先天性脳疾患を伴った筋ジストロフィー(Walker-Warburg症候群)の患者において報告された。Walker-Warburg症候群は、dystroglycan(DG)の糖鎖異常が原因とされるため、Eogt-LがDGの糖鎖修飾に関わる可能性が示唆された。そこで、我々は、DG-FcとEogt-LをHEK293細胞に過剰発現させ、糖鎖認識抗体を用いてDG-Fcの糖鎖発現変化を解析した結果、Eogt-LがDGを修飾する糖転移酵素である可能性が示唆された。また、未熟な糖鎖構造を有するDG-Fcを基質とし、Eogt-Lを含む膜画分を酵素源として用いた活性測定においても、同様な結論が示唆された。さらに、Walker-Warburg症候群に同定された遺伝子変異は、糖鎖認識抗体との反応性を低下させた。しかしながら、Eogt-Lが合成する詳細な糖鎖構造の特定にまでは至らなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Eogtの神経機能の解析については、実施予定項目の一部に研究計画の遅れがあるが、Eogt-Lの分子機能の解析に当初の予定以上に研究計画の進展が認められるため、全体としては、おおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
前年度の結果をふまえて、本年度は、Eogt-Lが合成する詳細な糖鎖構造の特定を目指すとともに、Eogt-L欠損マウスを用いて、EOGT-likeが触媒する糖修飾に起因するdystroglycanの機能変化と、Eogt-L欠損に伴うWalker-Warburg症候群の病態との関連性の解明に道筋をつけることを目指す。また、上皮成長因子ドメインを修飾する糖転移酵素Eogtに関しては、Notch受容体のO-GlcNAc糖鎖修飾により、結合能が変化するリガンド分子を特定する。例えば、培養細胞を用いた結合実験にて糖鎖暗号のリガンド・レセプター相互作用への影響を明らかにする。また、生理学的意義の解明のため、 変異マウスを用いて免疫組織化学、行動実験、電気生理学的手法を用いて、ミエリン形成、大脳皮質の層構造の形成、軸索形成、シナプス可塑性、学習・記憶の解析を行なう。
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