研究領域 | 統合的神経機能の制御を標的とした糖鎖の作動原理解明 |
研究課題/領域番号 |
24110508
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
金川 基 神戸大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (00448044)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 糖鎖 / ジストログリカン / 中枢神経障害 / 基底膜 |
研究実績の概要 |
基底膜成分やシナプス分子の膜受容体であるジストログリカンが、リガンド分子と結合するためには、糖鎖修飾が必要である。一方で、ジストログリカンの糖鎖異常は、脳奇形や精神発達遅滞などの中枢神経障害を伴う、先天性筋ジストロフィーの原因になることも知られている。最近、ジストログリカンのO-マンノース糖鎖上に、リン酸ジエステル結合を介して存在する、ポストリン酸糖鎖が発見されたが、このポストリン酸糖鎖の欠如が、リガンド結合の低下や脳奇形の原因になることが明らかになってきた。しかし、ポストリン酸糖鎖に関して、上述の先天性筋ジストロフィーの原因遺伝子産物(フクチン、LARGE、FKRP)が、その形成に関与すること以外、全く明らかにされていない。本研究では、このユニークな機能ドメイン、ポストリン酸糖鎖の構造と修飾機序を明らかにし、また、大脳皮質層構造の形成に重要な糖鎖シグナルや、ポストリン酸糖鎖が制御する神経機能を同定する。 ポストリン酸糖鎖構造の同定にむけて、修飾部位を限定した活性型ジストログリカン組換え体を作出し、糖質化学的手法で構造解析を進めている。また、ポストリン酸糖鎖修飾に異常をもつ、フクチンcKOマウスを用いて、大脳皮質層構造異常の要因を検討した。糖鎖異常によって、胎生期に、アストロサイトと基底膜との相互作用が悪化し、基底膜が破綻することが、神経細胞の移動障害に発展することが示された。また、基底膜破綻の時期によって、その後の病態の重篤度が左右されることも明らかになり、糖鎖が時間・空間的にも重要な役割を担っていることも示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
糖鎖構造と修飾機構の解析に必要な研究材料等の調整がすすみ、現在も順調に研究が進行している。また、糖鎖機能について、脳発生過程における時空間的に重要な役割を明らかにでき、脳形成や病態発生のメカニズムを解明する糸口をとらえることができた。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き糖鎖構造と修飾メカニズムの解析を継続する。糖鎖機能については、細胞レベルでの解析を新たに行う。一方で、新たなモデル系を用いて、糖鎖機能の異常に起因する、中枢神経障害が治療可能か否か、検討をはじめる。
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