研究領域 | 統合的神経機能の制御を標的とした糖鎖の作動原理解明 |
研究課題/領域番号 |
24110512
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
矢木 宏和 名古屋市立大学, 薬学研究科(研究院), 助教 (70565423)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 糖鎖 / AGO61 / キシロース含有N型糖鎖 / 脳形成 |
研究実績の概要 |
本年度は、キシロース含有N型糖鎖の生合成にかかわる候補遺伝子(AGO61)の遺伝子欠損マウスの解析を行った。これまでの我々の研究によりAGO61は主に神経系に発現しているということから、本遺伝子欠損マウスおよび野生型胎児マウスの脳における遺伝子発現量の比較を遺伝子マイクロアレイにより行い、Wnt-catenin経路で活性化する一連の遺伝子が顕著に抑制されていることを明らかにした。 また、この遺伝子マウスの脳を免疫組織化学的に解析した結果、脳の層形成の不全が起きていることを見出した。特に、大脳皮質において放射状グリア線維の形態異常が認められ、基底膜を形成するラミニンの発現異常が生じていることを明らかにした。一方、AGO61の遺伝子欠損マウスは、ラミニン結合性を示す糖鎖が発現していないことが判明した。こうした結果から、AGO61は本糖鎖の生合成を担っており、脳の層形成を制御している可能性を示すことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
AGO61のノックアウトマウスの表現型解析により、組織レベル、分子レベルでのAGO61の欠損の影響をとらえることができた。さらに申請当初の予想を超え、AGO61がα-DG上のラミニン結合性糖鎖の生合成に関与していることを見出すことができた。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究により、AGO61の遺伝子欠損マウスがα-dystroglycan(α-DG)上のラミニン結合性を示す糖鎖が発現していないことを見出すことができた。本年度は、AGO61がいかにしてα-DG上のラミニン結合性の糖鎖の生合成を担っているかを明らかにすることを通じて、AGO61の脳形成過程への関与を調べる。 野生型マウスおよびAGO61欠損マウスから胎児繊維芽細胞を樹立し、各細胞からα-DGをリコンビナントタンパク質として発現させ、それらが発現している糖鎖の詳細な構造解析を行う。これにより、AGO61の基質およびドナー糖が明らかになることが予想される。 α-DG上のラミニン結合性糖鎖の生合成過程には、AGO61以外にも様々な糖転移酵素(LARGE、POMT-1、POMT-2など)が関与していることが報告されているものの、未だ本糖鎖の全体構造は明らかになっていない。その理由としては、生体ではラミニン結合性糖鎖が微量にしか存在しないことに加え、これまで知られている糖転移酵素以外にも本糖鎖の合成に関わる酵素が存在する可能性が考えられる。本研究では、これらラミニン結合性の糖鎖の生合成に関与する酵素は、細胞内で複合体を形成し、協調して本糖鎖の合成を担っていることを想定し、AGO61 と相互作用する分子の同定を計画している。さらに同定した各酵素のキャラクタライズを進めることで、ラミニン結合性糖鎖の構造およびその合成に関与する一連の酵素群が明かになることが期待される。
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