研究領域 | 統合的神経機能の制御を標的とした糖鎖の作動原理解明 |
研究課題/領域番号 |
24110516
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研究機関 | 京都産業大学 |
研究代表者 |
中山 喜明 京都産業大学, 総合生命科学部, 助教 (40512455)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | マクロピノサイトーシス / ムチン型糖鎖 |
研究実績の概要 |
タンパク質に結合するムチン型糖鎖の合成開始反応を触媒するppGalNAc-T17は高次脳機能障害を示す先天性遺伝子疾患ウィリアムズ症候群の原因候補遺伝子の一つであり、海馬や視床、小脳の神経細胞に強く発現する。申請者らは、以前の研究で、ゼブラフィッシュ胚を用いて、ppGalNAc-T17阻害胚では後脳神経細胞の軸索投射に異常がみられること、培養細胞を用いた実験系からはppGalNAc-T17がエンドサイトーシス経路を制御していることを明らかにしてきた。これらの知見はppGalNAc-T17が神経細胞においてエンドサイトーシス経路を介して膜タンパク質や細胞膜の輸送を調節し、神経回路形成において重要な役割を担っている可能性を示している。本研究ではこの可能性を検証し、複雑な細胞外因子との相互作用により調節を受ける神経回路形成過程におけるムチン型糖鎖の役割の総合的な理解を目的とする。本年度は、培養細胞を用いた研究から、ppGalNAc-T17がエンドサイトーシスの中でも、細胞骨格タンパク質であるアクチンに依存したマクロピノサイトーシスを負に制御すること、またその活性は細胞内栄養状態の指標の一つであるN-アセチルグルコサミンの濃度に相関性を有していることを明らかにし、Journal of Biological Chemistry誌上で発表した。このことはppGalNAc-T17が細胞内栄養状態のホメオスタシスの維持に一役を担っている可能性を示している。また、ppGalNAc-T17遺伝子欠損ESクローンを用いてppGalNAc-T17遺伝子欠損マウスを作製した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度の研究では、後脳神経細胞の軸索伸長過程やエンドサイトーシス過程の可視化を目的として、ゼブラフィッシュを用いて、エンドソーム構成タンパク質と蛍光タンパク質の融合タンパク質を発現する遺伝子組み換え体を作製する予定であったが、未だ完了していない。その一方で、ゼブラフィッシュを用いた新規糖転移酵素の機能解析が、予想を超えて進展し、これまでに報告の無い新しい型の糖鎖が初期発生段階の神経や軸索において重要な役割を果たしている可能性を見出すことが出来た。その他の研究計画については、当初の研究目標を概ね達成していることから、本研究課題の当初研究目的の達成度については、概ね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
新規等転移酵素の機能解析については、これまでの研究により得られた結果をもとに、引き続きゼブラフィッシュ神経発生における機能解析を行う。この際、より安定した解析システムを確立するために、TALENシステムを用いた遺伝子破壊ゼブラフィッシュを作製する。また、これまでに作製したppGalNAc-T17ノックアウトマウスについては、その神経症状に焦点を当てて解析を行う予定である。
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