公募研究
ケラタン硫酸はグリコサミノグリカン(GAG)の一種であるが、その構造は一般的なGAGとは大きく異なる。内部構造はウロン酸を含まず、ガラクトースとN-アセチルグルコサミンの二糖の繰り返しを基本骨格とし、N-グリコシド結合あるいはO-グリコシド結合でコアタンパク質に結合している。このような構造的特徴のため、これまで脳神経系のケラタン硫酸に関する詳細な研究はほとんど行われていない。申請者らは最近、ヒトiPS/ES細胞に対するマーカー抗体を作成しているが、その一種、R-10Gはケラタン硫酸を認識する抗体であり、従来より汎用されている抗ケラタン硫酸抗体とは交差反応を示さない新規抗体であることが示されている。R-10Gはヒト成体および胎児組織とほとんど反応しない特異性の高い抗体であるが、興味あることに、成体脳組織をiPS/ES細胞とほぼ同程度の強さで染色した。本研究では、このR-10G抗体を新たなプローブとして、脳神経系に特徴的に発現するケラタン硫酸の構造と機能の解析を進めた。 その結果、従来の市販の硫酸化ケラタン硫酸を認識する抗体で脳を染色した場合、一部の特徴的な部位が染色されるため、ケラタン硫酸は脳のごく限られた領域に存在すると考えられていたが、R-10Gは脳組織をかなり広範に染色することから、R-10Gを用いた、脳におけるケラタン硫酸の役割に関する新しい研究が開始されている。R-10Gエピトープとしてのケラタン硫酸はiPS細胞の分化に伴い急速に消失するが、生後間もなく、脳の組織形成時に強く発現する脳組織分化マーカーの一種であることが判明した。 iPS細胞ではR-10GエピトープはI型膜タンパク質であるポドカリキシン分子上に発現しているが、脳組織においてはコンドロイチン硫酸などのコアタンパク質であるホスファカンに発現している可能性が示された。
25年度が最終年度であるため、記入しない。
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