研究領域 | 統合的神経機能の制御を標的とした糖鎖の作動原理解明 |
研究課題/領域番号 |
24110518
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
楠 進 近畿大学, 医学部, 教授 (90195438)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | プロテオグリカン / 糖鎖合成酵素 / EAE / HNK-1 / 末梢神経障害 / 神経免疫 / 硫酸基 / 自己抗体 |
研究実績の概要 |
プロテオグリカン(PG)の糖鎖合成酵素遺伝子についての従来の検討から、一部の人にChGn-1遺伝子にアミノ酸置換および酵素活性の低下を伴う変異がみられることを見出していた。今年度この変異の有無が免疫性神経疾患の臨床経過の関連を示唆する結果を得たので、現在症例数を増やして検討中である。PGの糖鎖合成酵素であるC6ST-1のノックアウトマウスでは、myelin-oligodendrocyte glycoprotein (MOG)の感作による実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)が重症化し、同酵素のトランスジェニックマウスでは軽症化することが明らかとなった。PGの硫酸基が正常な構造をとるか否かでEAEの重症度が異なることから、糖鎖の改変が免疫性神経疾患の治療に応用できる可能性が示唆された。硫酸化グルクロン酸基をもつHNK-1糖鎖は、IgMパラプロテイン血症を伴うニューロパチー(IgM-N)の標的エピトープとして知られる。従来myelin-associated glycoprotein (MAG)および糖脂質のsulfated glucuronyl paragloboside (SGPG)が代表的な抗原として知られてきたが、PGのひとつであるphosphacanもHNK-1糖鎖をもつ複合糖質である。HNK-1を認識する複数のマウスモノクローナル抗体の反応性をみると、MAGおよびphosphacanに対する反応の相対的強さが抗体ごとに異なるという知見を得たことから、MAGおよびphosphacanにHNK-1糖鎖を付けた抗原を用意し、多数のIgM-N患者血清との反応の強さを検討した。その結果、両者に対する反応性の強さの比(M/P比)が1未満の症例では神経障害がより増悪することが明らかとなった。今後M/P比は難治例が多いIgM-Nの有用な臨床的マーカーとなる可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画は当初の予定通り進展しており、共同研究者との連携もスムーズにとれている。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、糖鎖遺伝子変異と臨床特徴の関連、糖鎖改変動物での実験モデルの解析、および糖鎖に対する自己抗体の検討を続ける。
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