研究概要 |
ヘパラン硫酸プロテオグリカン(HSPG)はコア蛋白質にヘパラン硫酸(HS)鎖が共有結合した糖タンパク質であり、非常に多様な分子と相互作用することで細胞増殖や細胞接着を含めた多くの生物学的現象に関与することが知られている。HSPGがこの様な多彩な機能を示す一つの要因は、HS鎖が様々な修飾酵素によって修飾を受け、極めて多様な微細構造を持つためだと考えられている。しかしながら、その複雑さ故、生体内におけるHSPGの詳細な作用機構は未だよく分かっていない。本研究では神経筋接合部の形成におけるHSPGの機能に注目し、遺伝学的手法に優れたショウジョウバエを用いて解析を行った。その結果、分泌型HSPGであるパールカンがシナプスにおいて分泌性分子Winglessの局在を調節することで、同調したシナプス前後部の発達を促進することを昨年度明らかにした (Kamimura et al., JCB, 2013)。興味深いことに近年、Wingless等のヘパリン結合性分子の局在が神経活動に依存して変化することが知られている。そこで私たちは運動の増加やチャネルロドプシンの発現による神経活動の増加がHSPGの局在にどの様な影響を与えるのか調べた。その結果、パールカンの局在に変化は観察されなかったが、グリピカン等の他のHSPGのシナプスにおける局在が神経活動によって変化することを見出した。また、これらのHSPGのRNAi個体では運動依存的なシナプス終末の増加が抑制されることが判明している。以上の結果から、HSPGがシナプスの可塑的な形態変化を調節することが明らかとなった。現在、HSPGのどの様なHS微細構造がシナプスの可塑性に関与するのか調べている。
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