研究領域 | 統合的神経機能の制御を標的とした糖鎖の作動原理解明 |
研究課題/領域番号 |
24110523
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研究機関 | 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所) |
研究代表者 |
萬谷 博 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所), 東京都健康長寿医療センター研究所, 主任研究員 (20321870)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 糖鎖 / 脳神経疾患 |
研究実績の概要 |
O-マンノース型糖鎖の異常は先天性筋ジストロフィー症の一種であるα-ジストログリカノパチーの原因となる。α-ジストログリカノパチーは中枢神経障害を伴うことから、脳発生過程におけるO-マンノース型糖鎖の重要性が示唆されている。しかし、詳細な分子メカニズムはほとんど分かっていない。本研究は脳発生過程におけるO-マンノース型糖鎖の機能解明を目的とする。本年度はO-マンノース型糖鎖の合成酵素であるPOMTおよびPOMGnT1を欠損させたα-ジストログリカノパチーモデル動物の作製と解析を行なった。これまでにPOMGnT1ノックアウト(KO)マウス、POMT1, POMT2ノックダウン(KD)ゼブラフィッシュを作製しており、今回、脳特異的POMT1 KOマウスとPOMGnT1 KDゼブラフィッシュを作製した。POMT1の完全KOマウスは致死性であったことから脳特異的KOを試みた。脳特的POMT1 KOマウスは見かけ上正常に出産され成長の過程においても明らかな異常は観察されなかった。脳の生化学的解析からα-ジストログリカノパチーの特徴であるO-マンノース型糖鎖不全が確認された。POMGnT1 KDゼブラフィッシュにおいても同様にO-マンノース型糖鎖不全が確認され、以前に報告したPOMT1, POMT2 KDと同様に中枢神経系と筋組織の発生異常が確認された。O-マンノース型糖鎖の生合成においてPOMTは合成開始、POMGnT1は2番目に働く酵素であり、POMT1 KO(KD)ではO-マンノース型糖鎖が全く無い状態、POMGnT1 KO(KD)はマンノースのみ修飾され、その後の伸長反応が起こらない状態となるため、これらのモデル動物における糖鎖異常と病態を比較することで、O-マンノース型糖鎖の機能解明に重要な知見が得られることが期待できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
POMT1の完全KOマウスは致死性であったが、Cre-loxPシステムを利用したPOMT1の脳特異的マウスが生存状態で生まれ、見かけ上正常に成長することが確認されたことから、O-マンノース型糖鎖の欠損による脳発生過程への影響の解析が可能となった。予備的な知見としてPOMT1欠損による脳組織の異常を見いだしている。POMTとPOMGnT1はO-マンノース型糖鎖の生合成の最初と2番目に働く酵素であるため、POMT欠損モデルとPOMGnT1欠損モデルの両者を比較できるようになったことは、今後の研究の進展に非常に有効となる。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画に従い、(1)合成糖鎖による相互作用タンパク質の探索と糖鎖機能ドメインの同定、(2)神経細胞移動における糖鎖機能の解析、を行なう。特にPOMT1欠損、POMGnT1欠損状態の脳における糖鎖変化および病態の解析を重点的に行なう。また、分子メカニズムの生化学的な解析には、動物個体よりも培養細胞レベルでの解析(遺伝子の強制発現や変異の導入など)が有効となる場合があるため、酵素欠損マウスからの培養細胞株の樹立を試み、細胞レベルでの実験系の構築を目指す。欠損マウスの解析からO-マンノシル化されているタンパク質の同定を試みる。
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