公募研究
本研究は脳発生過程におけるO-マンノース型糖鎖の機能解明を目的とする。O-マンノース型糖鎖の異常は中枢神経障害を伴う先天性筋ジストロフィー症であるα-ジストログリカノパチーの原因となることから脳発生過程における重要性が示されている。本年度は、合成糖鎖による相互作用タンパク質の探索と糖鎖機能ドメインの同定、神経細胞移動における糖鎖機能の解析を計画しており、特にPOMGnT1欠損およびPOMT1欠損マウスを解析し以下の知見を得た。POMGnT1欠損マウスの解析から脳に存在する受容体型プロテインチロシンホスファターゼβ(RPTPβ)のO-マンノース型糖鎖上にはHNK-1エピトープが形成されており、脳の発生に重要な働きをしていることを明らかにした。脳特異的POMT1欠損マウスは外見上正常に成長し明らかな異常は観察されなかった。8週齢の欠損マウス脳では、POMT活性はほぼ完全に消失していた。ウエスタンブロットの結果、欠損マウス脳ではα-ジストログリカンの分子量低下と抗糖鎖抗体(O-マンノース型糖鎖)の反応性の消失が観察された。また、胎生16日の大脳より調製した初代培養神経細胞およびアストロサイトでも脳と同様にα-ジストログリカンの分子量低下と抗糖鎖抗体の反応性の消失が観察された。これらの結果から、欠損マウスの脳ではO-マンノース型糖鎖がほぼ完全に欠損していることが明らかになった。8週齢の脳では、サイズや重量において野生型と欠損マウスの有為な差は認められなかった。また、パラフィン切片を作製し脳組織像を観察したところ、大脳新皮質、小脳皮質において神経細胞のmigration異常によると思われる層構造の乱れが観察された。本研究により中枢神経系におけるO-マンノース型糖鎖の重要性がより詳細に明らかになり、モデルマウスや合成基質などの研究リソースやツールの開発に貢献できた。
25年度が最終年度であるため、記入しない。
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