研究実績の概要 |
本研究では, 液中陰極グロー放電による弱電離プラズマ中を流れる電流が陰極材料を母材とするナノ粒子を作り出すメカニズムを解明することを最終目的としている。 平成24年度は放電時の電流ノイズを高時間分解で計測でき同時に電極近傍の発光を画像記録できる実験システムを整備した上で, 先ず電流ノイズの高時間分解データを取得し, 電流ノイズの頻度分布解析・パワースペクトル解析を行った。次に電流測定と同時に液中プラズマ画像を得て画像輝度の時間変化に対するスペクトル解析を行った。さらに, 陰極上に残された放電痕の電子顕微鏡像に対し、画像解析, パワースペクトル解析を行った。 その結果,パワースペクトル密度のべき乗数αは電気分解領域ではほぼ0で, 電極表面の液相が気相に変わる遷移域では急激に減少し0から-2へと変化すること, またプラズマ領域では-2に近い値を保持することが判った。則ち, 両極間に印加する電圧の上昇と共に陰極周囲の物質相が液相から気相へ更に弱電離プラズマ相へと変わる過程を電流変動成分のスペクトル解析からべき乗数αを用いて統一的に表現可能なことを明らかにした。画像輝度と電流との同時測定からは,両者のパワースペクトル密度が周波数に対し同じべき乗依存性をもつことがわかった。 また,陰極表面に残された放電痕画像のパワースペクトル解析から放電痕分布が等方的であること,パワースペクトル密度が波数のべき乗(-2乗)分布をもつこと、および放電痕サイズ分布を対数プロットしたグラフから放電痕数がサイズのべき乗(-2乗)分布を持つことを確認した。これらの結果はナノ粒子が産み出される機構が間欠的なアバランシェ放電ないし電流集中に起因するも全体的には時空間にわたる自己相似性を有することを示唆するものであり, 今後より高範囲・高精度な測定による検証が行われる必要がある。
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