研究領域 | プラズマとナノ界面の相互作用に関する学術基盤の創成 |
研究課題/領域番号 |
24110703
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
和田 裕之 東京工業大学, 総合理工学研究科(研究院), 准教授 (00422527)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | レーザープラズマ / ナノ粒子 / 半導体 / 太陽電池 |
研究実績の概要 |
固液界面にレーザー光を照射するとプラズマが発生してその内部でナノ粒子が作製できる。本研究では、この生成機構を解明し、これらのナノ粒子の工学的応用を検討することを目的とする。レーザープラズマを用いてナノ粒子化する材料としては、半導体材料等の無機材料を用い、生成ナノ粒子の分析により、生成機構の解明とエネルギー分野を中心とした工学的応用を検討する。これまでに、Si、Y2O3:Er,Yb、YAG:Ceのナノ粒子化に成功し、評価を進めている。Si、Y2O3:Er,Ybは太陽電池の効率を向上させ、 YAG:Ceは白色発光ダイオードとして省エネルギー化が実現できるため、エネルギー分野での応用を目指してこれらの光学的特性を調査している。 ・半導体ナノ粒子(Si):レーザープラズマよるナノ粒子生成でのレーザー波長依存性を調査し、TEM観察、ラマン分光、蛍光スペクトル、吸収スペクトルのデータより、ターゲットの吸収係数が大きな532nmのレーザー光照射の方が1064nmに比べて、小さい粒径のナノ粒子が多く生成することを見出した。 ・アップコンバージョンナノ粒子(Y2O3:Er,Yb):レーザープラズマによるアップコンバージョンナノ粒子の生成を確認した。微細ナノ粒子(数10nm)と粗大ナノ粒子(数100nm)の混在を確認し、微細なものはプラズマによるターゲットからの生成、粗大なものはプラズマによる衝撃波での粉砕に起因する可能性を示した。ナノ粒子のアップコンバージョン発光は2光子過程と3光子過程の混在を示唆するデータを得た。バルクと同様にナノ粒子においても交差緩和を介してPhoton Avalanche効果を示すことを示した。 ・蛍光体ナノ粒子(YAG:Ce):レーザープラズマによるナノ粒子化においてはYAPやYAM等の準安定相は副生成物として生成しないことが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度計画した「生成機構解明」に関しては大凡達成していると考えている。特に生成ナノ粒子を詳細に解析し、ナノ粒子生成に関する考察を進めた。半導体ナノ粒子に関しては、照射レーザー波長依存性が高いことが分かった。ターゲットの吸収係数が高い波長程、核生成を増加させ、粒径の低下が観察された。また、セラミックス焼結体のナノ粒子に関しては、粗大ナノ粒子(粒径:数100nm)と微細ナノ粒子(粒径:数10nm)のものが混在した。前者は焼結体がレーザープラズマやその衝撃波で粉砕されたことに起因し、後者はレーザープラズマプルーム中で生成したことを示唆する結果を得た。プラズマの発光解析等は濃厚プラズマからの発光のために困難であることが分かったが、平成25年度には共同研究等を進めて更に知見を得ていきたい。 平成25年度に実施予定の「エネルギー分野での工学的応用」に関しては、既に予備実験が終了しており、本年度に量子ドット増感太陽電池を作製し特性を評価する。半導体ナノ粒子としてシリコンナノ粒子を作製した。デバイス作製のためにはある程度のシリコンナノ粒子が必要であり、平成24年度は生成量と実験パラメータの関係を調査した。一般に、長時間照射を行うと液中のナノ粒子が増加するため、それによる散乱や吸収で生成速度が低下する。本件研究ではいくつかの対策を講じたため、照射レーザーエネルギー密度やレーザー照射時間を増加させても生成量の飽和は観測されずに生成量を増やすことができることが分かった。また、このシリコンナノ粒子を用いてデバイス作製を行い、良好な結果を得た。これらを基に平成25年度はデバイス作製を更に進めていく。
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今後の研究の推進方策 |
生成機構解明に関しては、プラズマ発光等の観点から更に深い考察を加えると同時に、プラズマと間接的に関連した衝撃波等に関する調査を行う。この際、上述の様に液中で発生するプラズマは濃厚なため黒体輻射と同様のスペクトルとなっており、気中と同じ活性種評価は困難なことが分かり、今後新しい手法を検討していく。 エネルギー分野での工学的応用に関しては、量子ドット増感太陽電池を作製し、その評価を行う。シリコンナノ粒子は有望な材料であり、各種デバイスパラメータに関する調査を行い、特性改善を図る。シリコンナノ粒子の量子ドット増感太陽電池の電解質は多くの報告がないため、現在広く使用されているヨウ素系以外のものも検討していく。 生成ナノ粒子に関しては、更なる光学的特性評価を進める。アップコンバージョンナノ粒子は既存の太陽電池と組み合わせることによりエネルギー変換効率を高めることができる。通常のシリコン太陽電池はバンドギャップである1マイクロメートル程度以上の波長の光を吸収することができないが、アップコンバージョンナノ粒子は、散乱損失等なく、それらの波長の光を可視光等に変換できるため、変換効率向上が期待されている。このためアップコンバージョンナノ粒子の光学特性等を調査する。
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