本研究では我々が独自に開発中の「液中レーザー溶融法」における「間接発生プラズマ」の時間的・空間的ゆらぎをレーザー照射条件で変調し、粒子生成プロセスの制御を試みることを目的とした。本研究において間接発生プラズマは液中に分散させた原料ナノ粒子にナノ秒パルスレーザー光を照射することで原料ナノ粒子のみを選択的に加熱溶融し、その熱が液相中に拡散する際に界面において引き起こされる液相分子の熱分解によって発生すると考えられる。本研究ではこの目的を達成するために分光学的手法を用い、種々のレーザー照射条件における過渡的変化の検証を試みた。当初の計画では発生するプラズマの分光的な解析を行う予定であったが測定が困難であったため、レーザー照射により黒体放射と考えられる発光の分光測定を行い、レーザー照射による反応空間の温度とレーザーフルエンスの関係について調べた。ナノ秒パルスレーザー光を照射した際の照射方向に対して垂直方向の分散液からの発光を、照射パルスからゲート遅延200 ns、ゲート幅300 nsの条件で分光器を付属したICCDカメラにて測定し、得られたスペクトルをプランク式に近似することで粒子および反応空間の温度を評価した。見積もられた温度はレーザーフルエンスの増加に従い上昇し、照射後に溶融によると考えられる球状化が確認できたレーザー条件化ではホウ素の融点である約2350 Kを超えると評価された。これらの検証より、本プロセスでは短いパルス照射によっても原料粒子の溶融が起こっていることが初めて実験的に示唆された。他に液中レーザー溶融法において凝集状態が生成粒子サイズに及ぼす影響とその制御方法として電解質を分散液に添加する方法を提案した。また、混合原料粒子の分散液へのレーザー照射により複合化合物の合成も試みた。
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