気相であるプラズマと電極等の固相間の界面は、プラズマプロセスに直接的に関わると考えられるため、これまで様々な研究が行われてきた。本研究では、低圧プロセスプラズマと、液面と接する大気圧プラズマを対象に、プラズマの電子状態診断を行った。 大気圧プラズマは、近年では固体ではなく、液体と接した状態に注目が集まっている。これは、大気圧プラズマの医療やバイオ応用を考えた時、液体とプラズマの接触が避けられないからである。しかし、液体とプラズマが接することで、プラズマの基礎物理量(電子密度や電子温度)がどのように影響を受けるかは、まだ明らかになっていない。 このような背景のもと、液体と接する大気圧プラズマ中の電子密度・電子温度を、レーザートムソン散乱法を用いて測定した。トムソン散乱法を用いたのは、液体を含まない大気圧プラズマの診断手法として、高い信頼性を有しているからである。一方、大気圧程度に密度の高いガス中に計測用レーザーを入射すると、母ガスを多光子電離してしまい、計測が不正確になる恐れがある。本研究ではそのような擾乱に配慮し、十分にレーザーパワー密度が低い領域で、計測を行った。十分に低いパワー密度では、その反面、得られるトムソン散乱光強度が微弱となり、レーザー1000ショット程度の積算計測が必須となる。そのような計測が実現できるナノ秒パルス放電と、蒸気圧が極めて低い液体材料(イオン液体)を併用することで、安定した放電生成環境の元、液体電極使用による放電状況の変化を定量的に把握した。 低圧プロセスプラズマについては、数Torrオーダーのプローブ計測が困難となる圧力のプラズマについて、トムソン散乱法が適用可能な領域を明らかにした。
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