本研究は液-液界面に発生させたプラズマによる有機化合物の高効率反応の開発を行うことを目的とし、有機/水二層溶液の水層にフェムト秒レーザーを集光照射することで、単一溶媒に比べて遙かに効率よく親水性、そして疎水性の炭素ナノ粒子を生成することに成功した。試料調製直後に、界面から離れた位置にレーザー照射を行うと誘導期間を経て界面から黒色粒子が発生する。水中で生成したナノ粒子が界面で凝集し、目視可能なマイクロメートルサイズの凝集体となって観測されたと思われる。逆に試料調製から1日置き、界面に近い位置にレーザー照射を行うと誘導期間なしで水中から発生した粒子が目視できた。いずれも分散したものは直径20 nm程度の粒子であった。また、試料調製直後であっても、攪拌しつつレーザー照射することで分散性の高い疎水性粒子を作ることにも成功した。赤外吸収測定により親水性の原因は水酸基であり、ラマン散乱測定により親水性、疎水性粒子共に典型的な炭素粒子の骨格を有していることが明らかになった。一方、シクロヘキサンおよびノルマルヘキサンではナノ粒子の生成は見られなかった。飽和炭化水素では水酸化が生じているものの、ナノ粒子に繋がるような炭素ネットワーク形成が起こらなかったものと思われる。トルエンではナノ粒子生成は起きたものの量は少なく、ベンジルラジカル形成によりナノ粒子生成が阻害されたと思われた。ナノ粒子の元素組成を制御するためベンゼンの代わりにヘキサフルオロベンゼンを用い、ベンゼンと同様に親水性疎水性粒子を作り分けることに成功した。XPS測定によりフッ素の存在が確認され、TEM測定よりいずれの粒子も直径20 nm程度であったことから、フッ素含有の親水性・疎水性炭素ナノ粒子が生成したと結論した。本手法では炭素源となる有機層を選択することにより炭素ナノ粒子の元素組成制御が可能であることを示すことが出来た。
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