研究概要 |
本研究は1)プラズマスパッタによるナノ膜厚金属触媒層形成と2)プラズマCVDによるナノ膜厚グラフェンシート積層構造の形成を目標に、単パルスCVDによる膜厚2nmまでのDLCナノ膜厚積層構造の分析、間欠スパッタ成膜によるナノ微粒子触媒の制御、および導電性DLC膜の形成の3つのテーマに取り組んだ。また平成23,24年度公募研究として取り組んできたプラズマエッチングによる自己組織的ナノ構造形成についても引き続き研究を行い、制御されたナノ構造による親水性疎水性の表面制御が実現した。 数秒から0.1秒以下までの単パルス放電RFプラズマCVDで、最小膜厚2nmの極薄膜DLC層を形成し、X線反射測定(XRR: X-ray Reflectometer)による分析等により基板界面層と成長表面層を確認した。Si基板とDLC層の間には約1.2nmのmixing層があり、DLCバルク相に向かって約1nmにわたって組成が傾斜していると考えられる。DLC成長表面には膜厚1~2nm、密度0.2~0.5g/cm3の低密度な成長表面層が存在する。炭化水素などのイオン照射により緻密なバルクのDLC層が形成されていく過程で、イオンは表面層を透過しバルクDLC層の界面付近まで到達して止まると考えられ、成長表面層は不均一なポーラス状の構造であると推測されている。 触媒の粒径・密度制御のため、電気伝導性のその場測定を行ってナノ膜厚触媒金属の構造を推定した。DCマグネトロンスパッタ法によってNiターゲットをガラス基板または熱酸化Si基板上にスパッタ成膜し、電気伝導性の挙動から触媒金属の凝集~連続膜化の過程を検知した。興味深い結果として、間欠スパッタで得られたNiナノ粒子膜をアニール処理したところ、凝集が進まずナノ粒径が維持されることが確認された。 従来の炭化水素ガスに替えてCOガスを用いることで、高硬度を維持したまま導電性のDLC薄膜を合成することに成功した。グラフェンの成膜プロセスとして期待される成果となった。
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