公募研究
温かい温度を感じるために用いられている温度センサー・TRPV4(34℃以上の温度で活性化する)は、皮膚ケラチノサイトで温かい温度を受容していることが2002年に示された。この温刺激センサー・TRPV4が海馬に高発現をしていることを発見し、その結果、37℃近傍に保たれている脳内温度により海馬TRPV4が活性化し、カチオンの流入を介して、静止膜電位を脱分極側にシフトさせていることを突き止めた。このことは、温度センサーが神経細胞の興奮性を向上させていることを示しており、鳥類・哺乳類が高度な知能を有し得る分子機構のひとつだと考えられる。この研究により、脳内温度情報がどのように電気信号に変換され、神経活動に影響を与えているのかという分子基盤が明らかになった。これらの研究で得られた知見を活かし、てんかん発作の抑制に局所脳内の冷却が有用であることを検討し、民間企業と共同で新規機器を開発し、臨床応用の可能性を探ろうとしている。
1: 当初の計画以上に進展している
海馬スライス標本を用いた電気生理学的解析により脳内温度がニューロンの興奮に与える影響を分子レベルで明らかにした。また、その知見を応用し、脳内温度により恒常的に活性化しているTRPV4を不活性化するための局所脳冷却システムを開発し、自由行動下のマウスで任意に局所脳内を冷却することを可能にした。
てんかんモデルマウスの脳に開発した局所脳冷却装置を埋め込み、てんかんの治療効果を検討する。同時にてんかんモデルマウスの正常脳とてんかん部位を比較し、てんかん病態の悪化に関わる分子の同定も進める。
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http://www.nips.ac.jp/cs/sibaHP/shibasaki.html