研究領域 | 脳内環境:恒常性維持機構とその破綻 |
研究課題/領域番号 |
24111513
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
田中 敦 東京医科歯科大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (60404000)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | オートファジー / 細胞内小器官 / ミトコンドリア / 神経変性 / 品質管理 |
研究実績の概要 |
細胞内成分の分解系として知られるオートファジーは、その欠損により神経組織封入体形成を惹起し、神経組織の脱落や運動障害を呈することが知られている。封入体形成には自身もオートファジーの分解基質であるp62 タンパク質の蓄積が必要であり、マウスにおいてはオートファジーとp62 の二重欠損によって封入体形成は解消されるが、神経組織脱落や運動障害などは改善が認められない。このことは、オートファジー欠損による神経組織の機能障害、症状発現には、p62 による封入体形成以外の理由があることを示唆している。近年オートファジーのさらなる生理的機能として障害を得た細胞内小器官(オルガネラ)の駆除が報告されていることから、オートファジー欠損による神経組織障害に、障害オルガネラの蓄積が原因となる可能性を想定し下記の研究を遂行中である。H24年度研究活動としては、神経組織特異的オートファジー欠損マウスを用い、マウス出生後に神経組織内オルガネラの障害内容を下記の点について確認、検討した。 ・マウス神経組織オルガネラの検討 マウス出生後、細胞内封入体形成、神経組織脱落により示される運動障害が有意に認められる時点において、マウス神経組織、およびそこから得られたオルガネラ画分、特にミトコンドリアの機能と完全性について、組織学的、生化学的手法により検討した。結果、オートファジー欠損マウス神経組織において、さまざまなストレス応答性の変化が全体的に認められ、特にミトコンドリアについてはその機能低下、ならびにこれまでにミトコンドリアの機能異常指標として報告されている構成タンパク質の変化などが認められた。 ・ミトコンドリア以外のオルガネラ完全性の検討 さらなる検討として、ミトコンドリア以外のオルガネラについてもその完全性を検討中であり、特にミトコンドリアと密接に機能相関があるオルガネラ類についてその機能変化を認めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究課題遂行について、神経組織特異的オートファジー欠損マウスの解析は概ね順調に進んでいる。 ・研究目的への達成度 ミトコンドリアは、その形態、機能の変化を捉える手法が多く存在し、かつ周囲のオルガネラに与える影響(酸化ストレスやアポトーシス関連因子)の発生源に容易になることから、ミトコンドリアを中心とした検討をまず行った。その結果、得られた神経組織内のミトコンドリア機能変化(障害蓄積)について、大まかな全体像を把握できたと考えられる。これらは、当初の研究計画申請に沿った進行状況であり、今後も同様のマウス系統を用いた検討を続ける予定である。 また、現在進行中である解析においてミトコンドリア障害が他のオルガネラに与える影響、もしくはオートファジー欠損により独立に発生するかもしれないミトコンドリア以外のオルガネラ障害について解析を進めていくことで、オルガネラ全体として神経細胞内環境に与える影響と、それに続く神経変性、脱落へのステップを説明できると考えている。 ・研究活動遂行における達成度 H24年度期間中に、研究代表者は所属機関の変更があった。それに伴い、現在マウスの移設作業を申請、準備中であるが、新所属機関におけるマウス飼育の十分な活用までには期間が必要なため、旧所属である東京大学医学部、水島昇研究室にて同系統マウスの飼育補助、試料提供を受けつつ研究遂行の予定である。
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今後の研究の推進方策 |
・オルガネラ完全性の検討から説明するオートファジー欠損マウス神経障害 H25年度はより内容を詳細に検討すべく、ミトコンドリアについては呼吸活性の変化や酸化ストレス漏出の有無を、小胞体になど他のオルガネラについては細胞ストレス応答で変化するタンパク質の変化などを詳細に追跡する。 ミトコンドリア、小胞体共に細胞死を引き起こすアポトーシス経路にも関わっていることから、これら関連因子の変化にも注目する ことで、オートファジー欠損後の脳内環境、特にオルガネラを中心とした変化を検討する。オルガネラの異常を捉えると共に、これまでに明らかにされている封入体形成や神経組織脱落、運動障害などの各表現形との関連性も検討する。具体的には、封入体形成の細胞内位置( 細胞体、軸索など)とオルガネラの位置との相関、組織脱落までのオルガネラの機能障害の亢進、細胞死がオルガネラ障害が発生源のアポトーシス経路を経ている場合には種々の阻害剤を用いた細胞死抑制検討などを行う。これらの検討により、オートファジー欠損によるオルガネラの機能障害が原因となる、神経細胞の環境悪化と細胞死メカニズムに新たな知見を加えることを目指す。 ・他の神経障害表現形を持つマウス系統におけるオルガネラ機能障害の検討 オートファジー欠損マウスのみではなく、他の神経変性症様表現形を示すマウス系統について同様にオルガネラの完全性を検討する。認められるオルガネラ障害にオートファジー欠損マウスと同様の、あるいは相違がある内容が含まれる場合、その考察から神経組織におけるオートファジーの生理的役割の説明がより多面的に行えると考えている。
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