研究領域 | 脳内環境:恒常性維持機構とその破綻 |
研究課題/領域番号 |
24111522
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研究機関 | 滋賀医科大学 |
研究代表者 |
遠山 育夫 滋賀医科大学, 分子神経科学研究センター, 教授 (20207533)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 神経科学 / 認知症 / 核磁気共鳴画像 / アルツハイマー病 |
研究実績の概要 |
アルツハイマー病で最も早期に出現する神経病理学的変化は、アミロイドベータペプチド(Aβ)凝集体の出現である。Aβ凝集体は、まずはAβモノマーが重合してアミロイドオリゴマーなどの可溶性Aβ凝集体を形成し、その後βシート構造をとって不溶化する。この中で最も神経毒性が強いのはアミロイドオリゴマーであると考えられてる。本研究では、アルツハイマー病のAβ凝集体など異常タンパク凝集体を画像化することなどにより、その動態を明らかにし、病態解明や診断治療法の開発に資することである。本年度は、次のような解析を行い成果を得た。 1)我々は、これまで高磁場MR画像装置(7テスラ)を用いたフッ素MR画像法によるアミロイドイメージング試薬の開発を推進してきた。今回、βシート構造をとるAβ凝集体にのみ結合し、強いフッ素NMR 信号を出すShiga-X(benzoxazoleを基本骨格に持つ)化合物を開発し、特許を出願した。これにより、すでに所有しているアミロイドオリゴマーにも結合するShiga-Y(クルクミンを基本骨格に持つ)化合物と比較することで、アミロイドオリゴマーのin vivo解析を行うための試薬がそろったことになる。新規Shiga-X化合物については、論文を作成中であるとともに国際アルツハイマー病会議2013で発表予定である。 2)アミロイドオリゴマーに結合するフッ素MR画像用試薬をアルツハイマー病の遺伝子改変モデルマウスに経口投与すると治療効果を示すことを見いだし、特許出願した。論文を作製中である。 3)Aβを放射性物質で標識し、ラット脳室内に投与後、脳からの排泄経路を検証した。その結果、血管を経ずに鼻腔に直接排泄されること、鼻腔に蓄積するAβ量は脳内老人斑量と正の相関をすることを見いだし、論文発表した。 4)ペプチドを基本骨格とする新しい画像試薬の開発を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
以下の点からおおむね順調に進展していると考える。 1)アミロイドオリゴマーを画像化するための化合物の新規合成に成功して、アルツハイマー病遺伝子改変マウスでを用いての画像化に成功して特許を出願(特願2013-001948)できたことがまずあげられる。特許を優先したため論文は現在作製中であり、平成25年度中の受理を目指す。なお、本年7月に米国ボストン市で開催される国際アルツハイマー病会議2013で発表することが決まっている。 2)アルツハイマー病の遺伝子組換えモデルマウスを用いた実験で、アミロイドオリゴマーに結合する化合物にアルツハイマー病の治療効果があることを見いだし、特許出願(特願2012-260046)できた。これは、診断ばかりでなく治療法の開発に繋がる成果である。この件も特許を優先したため論文は現在作製中であり、平成25年度中の受理を目指す。 3)ベータアミロイドの脳内からの排泄経路やペプチドを基本とする画像化試薬の開発などを国際学術誌に発表した。
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今後の研究の推進方策 |
現在、アミロイドオリゴマーを画像化するための化合物の新規合成に関する論文を作成中で、出来るだけ早く投稿し、平成25年度中の受理をめざす。研究面では、βシート構造をとるAβ凝集体にのみ結合し、強いフッ素NMR 信号を出すShiga-X化合物を開発とアミロイドオリゴマーにも結合するShiga-Y化合物を遺伝子組換えモデルマウスに投与して画像を比較することにより、アミロイドオリゴマーの画像化に挑戦する。我々が開発し特許を出願したアルツハイマー病のMR画像診断化合物が、治療効果を持つことに関して、そのメカニズムに関する基礎実験を行った後、論文化を行う。
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