研究領域 | 脳内環境:恒常性維持機構とその破綻 |
研究課題/領域番号 |
24111529
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
岡村 康司 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (80201987)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 活性酵素 / ミクログリア / 亜鉛シグナル / pH / ホメオスタシス |
研究実績の概要 |
VSOP/Hv1は好中球などで微生物等を貪食した際の活性酸素産生に寄与し、脳内ではミクログリア特異的に発現する。本研究ではまずミクログリア初代培養系において、抗VSOP抗体を用いた免疫細胞化学によってその細胞内局在を調べた。その結果VSOPは細胞膜表面よりも細胞内小胞として豊富に局在することが明らかとなった。 次にこの局在がミクログリアへの刺激に応じて変化するかを検討するため、ミクログリアの正の走化性物質であるATPによる刺激を行なった。その結果VSOP含有小胞が細胞膜表面へ移行することが確認された。ミクログリアが走化性を示す際には細胞膜表面に#61538;-actinが集積してmembrane rufflingをとることが知られているがVSOPの局在はこれと一致した。同様の現象は他の刺激物質であるLPSによっても見られたため、VSOPの膜表面への移行は各種化学刺激に共通した機構であると考えられる。このような刺激依存的なVSOPの局在変化は、微生物等を貪食する際に積極的に膜表面へとVSOP小胞を集めることで、効率的な食胞内での活性酸素産生を可能にしていると考えられる。 Zn2+は中枢神経細胞のシナプス終末部から放出されシナプス伝達の変化や虚血後の神経細胞死などに関わるため、近年注目を浴びているシグナル分子である。そこでZn2+刺激時によってVSOPの細胞内局在が変化する可能性を考えた。Zn2+を投与すると報告通り形態学的にはミクログリアが活性化する様子が観察された。しかし他の化学刺激物質で見られたようなVSOP小胞の膜表面へのリクルートは確認されなかった。また過去に報告されたZn2+による活性酸素産生を増加させる現象は見られず、むしろ抑制が見られた。VSOPはZn2+で開口が阻害されるので活性酸素産生の抑制はVSOPを介した現象であると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
これまでの計画が順調に実施され、Znによるミクログリアの活性化、PMA刺激での活性酸素産生でのHvチャネルの役割を明らかにすることができた。更に細胞内膜にHvチャネルが局在することを見出し、分布がミクログリアの活性化によって細胞膜近傍へ移動する変化を示すという重要な端緒を得ることに成功した。
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今後の研究の推進方策 |
今回明らかになった、細胞内の電位依存性プロトンチャネルがミクログリアで細胞膜近傍へリクルートされる現象は、実際に電流活性の増加や貪食機能などの変化に繋がっているかが重要な点である。そこで今後、培養ミクログリアにおいてATP刺激下でホールセルパッチクランプ法による計測を行い、電流量の増加が見られるかを検討する。
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