公募研究
1) 培養細胞系におけるLOTUSの機能解析:COS7細胞に強制発現させたLOTUSは、NgR1の4種のリガンド(神経再生阻害因子群:Nogo,, MAG, OMgp, BLyS)についてLOTUSの拮抗作用を検討したところ、NgR1との受容体結合を完全に抑制すること、脊髄 DRG細胞におけるる成長円錐の崩壊・退縮応答を完全に抑制すること、LOTUSを発現している嗅球神経細胞(OBニューロン)においてLOTUS-KOマウスでは成長円錐の崩壊・退縮応答を示した。これらの結果は、LOTUSは4種全てのリガンドに対して拮抗作用を示す“スーパ ーアンタゴニスト”活性を有することを示す。2) 脊髄損傷モデル動物の作製と神経再生状態の解析: LOTUS-KOマウスを用い、脊髄損傷モデル動物を作製して野生型マウスと比較検討した。胸椎7-8位で背側反側切断を行って下肢の歩行麻痺状態を作製し、BBBスコアリングによる歩行状態を経時的に解析したところ、野生型マウスが示す自然回復能(自然再生能)がLOTUS-KOマウスでは著しく障害され、げっ歯類が有する自然再生能にLOTUSが大きく貢献していることが示唆された。一方、脊髄損傷前後において患部周辺領域におけるLOTUSの発現変動をウエスタンブロッティング法で精査したところ、損傷後7日目まではLOTUSはやや減少傾向を示したが大きく変動せず、損傷後10-14日目に約50%程度まで発現が減少した。これらは野生型マウスにおける上述の自然回復を示す動向と一致し、LOTUSが自然再生能と密接な関係にあることが更に示唆された。3) LOTUS過剰発現(LOTUS-TG)マウスの作製:軸索末端に局在するSynapsin-1をプロモータとして軸索に特異的に過剰発現するLOTUS-TGマウスを作製した。現在、解析に用いるためのコロニー形成を実施している。
2: おおむね順調に進展している
交付申請書に記述した内容の内、平成24年度に計画した内容の約70-80%は達成した。予定になかった内容として、軸索伸長解析において、PirBとLOTUSの結合によって網膜神経節細胞の軸索伸長が促進されると予想したが、LOTUSとPirBの結合はPirBが受容体として受容する神経突起伸長阻害因子との相互作用に対して拮抗作用を示すことが判明した(後述)。LOTUSは培養基質として神経突起伸長に対して促進的に働く一方、NgR1 遺伝子欠損マウスから調製した培養細胞においても LOTUS 基質上で同様の 神経突起伸長作用が示されたことから、LOTUS の神経突起伸長は NgR1 とは異なる相互作用分子 を介した作用であると考えられた。神経突起伸長を促進する未知の LOTUS 結合分子を RGC 発現 遺伝子ライブラリーや免疫沈降実験などで同定する一環として、LOTUSとの相互作用が見られたPirBについて培養網膜神経節細胞を用いて調べた。抗PirB抗体によって機能阻害した時の神経突起伸長について精査したところ、申請当初予想した結果とは異なり、PirBの機能阻害によって突起伸長が有意に阻害されることはななく、PirB以外のLOTUS相互作用分子が存在すると考えられた。そこで、NgR1-KOマウスの脳切片を作製し、アルカリフォスファターゼ(AP)融合LOTUSを切片上にふりかけて付着する場所を解析して当該分子の発現脳部位を特定する試みを行っている。それによって、当該部位のタンパク質ライセートを用いて免疫沈降法で当該分子を同定する予定である。上記の予定になかった検証研究を当該年度中に進めた。当初の計画達成度80%とこれらの予定外の研究進展を合わせて、おおむね順調に進展していると判断した。
1) LOTUS-KOマウスおよびLOTUS-TGマウスにおいて脊髄損傷モデルを作製し、損傷後の運動回復過程を野性型と比較検討する。2) 網膜神経節細胞の神経突起伸長に関与するLOTUS相互作用分子を同定する。そのために、網膜神経節細胞のcDNA発現ライブラリを作製し、LOTUSと結合する分子を探索する。3)LOTUS-KOマウスおよびLOTUS-TGマウスにおいて実験的アレルギー性脳炎モデルを作製し、発症後の運動機能障害過程を野性型と比較検討する。
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Annual Review 2013 神経
巻: - ページ: 63-67
横浜医学
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10.1002/dneu.22058
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日本薬理学会雑誌(Folia Pharmacology Japan)
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