研究領域 | 脳内環境:恒常性維持機構とその破綻 |
研究課題/領域番号 |
24111542
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
古川 良明 慶應義塾大学, 理工学部, 准教授 (40415287)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 蛋白質 |
研究実績の概要 |
タンパク質線維が脳・神経組織に蓄積すると神経細胞死の原因となり、アルツハイマー病などの神経変性疾患を引き起こすとされる。シードが何らかの形で生体内に形成・導入されると、タンパク質の線維化が一気に促進しうることから、神経変性疾患の感染危険性や、あるいは時間とともに拡大する病態の伝播性を、シーディング現象により説明できるのではないかと考えている。つまり、細胞内にシードが自発的に形成したり、あるいは細胞外環境から導入されたりすると、シーディング現象が細胞内・間で爆発的に進行し、病巣(タンパク質線維が認められる領域)が加速度的に拡大・伝播することで、「脳内環境」を一気に破綻させ病態を進行させることが考えられる。そこで本課題では、線虫に着目した新たな動物モデルを構築することで、シーディング現象が病態の進行・拡がりを制御する可能性を検証し、その分子メカニズムを明らかにする。平成24年度では、神経変性疾患ALSの病因タンパク質であるSOD1をモデルとして着目し、GFP融合型ALS変異SOD1(GFP-SOD1)の作製・精製を行った。また、大腸菌内にALS変異SOD1を過剰発現させて不溶性の封入体を形成させ、それらがアミロイド様の線維状凝集体であることも確認し、さらに試験管内にて、精製したGFP-SOD1の凝集を開始させる「シード」として機能することも明らかにできた。現在は、GFP-SOD1を発現するトランスジェニック線虫の作製を進めており、線虫をモデルとしたタンパク質線維化のシーディング機構についての検討を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度では、ALS変異型SOD1の線維状凝集体を大腸菌内に形成させることに成功し、それらはGFP-SOD1の凝集を開始させるシードとして機能することを試験管内にて確認することができた。よって、本研究の目的である「線虫を用いたシーディングモデルの構築」のための基礎的データを得ることができ、概ね順調に遂行されたと言える。
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今後の研究の推進方策 |
GFP-SOD1を発現するトランスジェニック線虫の作製を行い、線虫内におけるALS変異SOD1の凝集の観察を行う。大腸菌に形成させたSOD1の線維状凝集体をトランスジェニック線虫に与えることで、シーディング現象を再現することができるか検証する。
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