公募研究
選択的オートファジーの主要アダプタータンパク質であるp62はS403リン酸化により選択的オートファジー活性型となる。活性型p62は一定量細胞に存在するが、プロテオスタシス(タンパク質恒常性)の変容を与えるようなストレス条件下において、例えばプロテアソームの処理能力を超えてユビキチン化タンパク質が蓄積した場合や、ミトコンドリアのような大きなオルガネラを分解する場合、一時的に多量の活性型p62分子が必要になると考えられる。従って、このようなストレス条件下では、p62のS403リン酸化が誘導されるはずであると推測される。Parkin依存性マイトファジーはミトコンドリアの膜電位の消失による傷害ミトコンドリアのオートファジーによる分解システムであり、薬剤によりミトコンドリアの脱分極を引きおこすことで誘導することができる。薬剤誘導によるParkin依存性マイトファジーにおけるp62のリン酸化状態を経時的に調べた。その結果、ミトコンドリアの膜電位消失すると、ミトコンドリアはフラグメント化し、その後リン酸化型p62が一過性に増加することがわかった。この一過性のリン酸化は、ユビキチンE3リガーゼであるParkinのユビキチン化に依存することも、Parkin変異体解析により明らかにした。この一過性のp62のリン酸化をおこなうプロテインキナーゼも同定し、主としてリン酸化p62がマイトファジーを駆動していることを実証した。
2: おおむね順調に進展している
マイトファジーはミトコンドリア傷害により引き起こされ、神経変性疾患、とくにパーキンソン病においてその疾患の原因のひとつであると考えられている。本研究では、ストレスにより傷害を受けたミトコンドリアがどのようにして分解されているのかという問題に対して、p62による選択的オートファジーの詳細な分子機構を明らかにすることができた。
傷害ミトコンドリアの分解機構では、マイトファジーが起こるのは非常に限定された時間帯であり、その後は、非リン酸化p62が主となり、ミトコンドリアのクラスターを形成することによる傷害ミトコンドリアの細胞内隔離が行われていることがわかった。この知見をもとに、今後p62のリン酸化状態を指標とした選択的オートファジーの分子機構を明らかにし、マイトファジーの全容解明を目指していく。
すべて 2012
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 1件)
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