研究領域 | 脳内環境:恒常性維持機構とその破綻 |
研究課題/領域番号 |
24111556
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研究機関 | 公益財団法人東京都医学総合研究所 |
研究代表者 |
野中 隆 公益財団法人東京都医学総合研究所, 認知症・高次脳機能研究分野, 副参事研究員 (30356258)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | TDP-43 / 前頭側頭葉変性症 / 筋萎縮性側索硬化症 |
研究実績の概要 |
前頭側頭葉変性症(FTLD-TDP)や筋萎縮性側索硬化症(ALS)の患者脳などに見られるユビキチン陽性の細胞内異常凝集体の主要な構成タンパク質としてTDP-43が同定された。本年度は,患者脳より調製した不溶化TDP-43を凝集核(シード)として細胞内に導入する方法を開発し,これを用いて細胞内に異常TDP-43が蓄積する細胞モデルの構築を試みた。予め全長TDP-43のプラスミドを一過性に発現したSH-SY5Y細胞に,様々な患者脳より調製した不溶性画分(TDP-43の細胞内凝集体が含まれる画分)をトランスフェクション試薬と共に導入した。数日間培養したのち細胞を回収し,抗リン酸化TDP-43抗体を用いた免疫組織化学的解析や,可溶性画分と不溶性画分に分画して抗リン酸化TDP-43抗体などによるイムノブロットを行った。その結果,蛍光顕微鏡による観察において,本来ならば細胞内で不溶化しないプラスミド由来の全長TDP-43がリン酸化を受けて細胞内で凝集体を形成することが判明した。またイムノブロットにおいては,不溶性画分に全長TDP-43の蓄積およびC末端断片が顕著に検出された。特にC末端断片のバンドパターンは,シードとして加えた患者由来の不溶性画分のバンドパターンとほぼ同じであった。この結果は,細胞内において,外から加えた不溶化TDP-43が凝集のシードとなって可溶性TDP-43が蓄積することを示唆している。さらに,乳酸脱水素酵素(LDH)漏出アッセイにより,このようなTDP-43の凝集体を形成する細胞において細胞死が認められた。この結果より,細胞内において全長TDP-43が蓄積することにより細胞死が引き起こされる可能性が考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画の通り,年度ごとに順調に遂行されている。患者脳の不溶性画分を用いた細胞モデルは,当初の計画通り今年度にほぼ構築でき,これを用いてさらなる解析を検討しているところである。
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今後の研究の推進方策 |
患者脳の不溶性画分を用いた細胞モデルを用いて,患者脳シードの新たな性質について検討している。非常に興味深い結果が出ており,今後の研究展開が期待できる。
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