公募研究
軸索変性はアルツハイマー病,パーキンソン病などの神経変性疾患に共通する所見であり,その制御機構を明らかにすることは疾患の抑制,さらには治療方法の開発に重要な意味をもつものと考えられる.研究代表者はこれまでに,セリン・スレオニンキナーゼであるAKTがユビキチンリガーゼZNRF1を介しプロテアソームに依存的に分解されて軸索から消失することが,軸索変性を促進する主要なシグナルカスケードであることを明らかにした.本研究では,このシグナルカスケードを研究対象として軸索変性を分子細胞生物学的に理解し,これを制御する方法論を確立することによって,その成果を治療薬の開発などの前臨床段階の研究へ発展させることを目的として開始された.本研究により,主に以下の成果が得られた.① 細胞内レドックスを介したZNRF1自身のリン酸化によりそのユビキチンリガーゼ活性が亢進する.② ZNRF1を介する細胞内シグナルの抑制が6-ヒドロキシドパミン投与モデルなどの酸化ストレスにより誘発される神経変性を培養レベル,動物個体レベルで阻止する.これらの成果からZNRF1を起点とした「軸索変性の分子メカニズム」の分子実体が概ね明らかとなり,神経変性疾患の動物個体モデルを対象とした治療的アプローチへ発展させる手がかりを得た.この他,ナトリウムイオン・プロトン交換輸送体が神経細胞の基底レベルのオートファジー制御に関与し,同交換輸送体ファミリーの活性を亢進させることによりポリグルタミン凝集形成を抑制できること,また,末梢神経再生過程において,代謝型グルタミン酸受容体シグナルがシュワン細胞の増殖,分化の制御に関与すること,グリア増殖因子に応答したシュワン細胞の細胞遊走がインテグリンalpha5beta1-ErbB-FAK複合体を介する細胞内シグナルにより制御されることなどの成果を論文にまとめ発表した.
25年度が最終年度であるため、記入しない。
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Genes Cells
巻: 19 ページ: 66-77
10.1111/gtc.12108.
PLoS One
巻: 8 ページ: e81313
10.1371/journal.pone.0081313.