研究領域 | 脳内環境:恒常性維持機構とその破綻 |
研究課題/領域番号 |
24111560
|
研究機関 | 独立行政法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
桑原 知子 独立行政法人産業技術総合研究所, 幹細胞工学研究センター, 主任研究員 (90358391)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
|
キーワード | 神経幹細胞 / 神経疾患 / グリア |
研究実績の概要 |
グリア細胞産生因子について、糖尿病やうつ病などの疾患状態での応答メカニズムの解析を行った。糖尿病動物はストレプトゾトシンの腹腔注射によって作成し、糖尿病の進行に伴い、非常に初期の段階からアストロサイト細胞が産生するWnt3の発現が減衰すること、Wnt3の阻害因子であるIGFBP4の発現が上昇すること、それらと海馬の神経新生の減衰が付随することがこれまでの研究でわかった。さらに、サイトカインの発現を調節する因子の制御機構を、糖尿病ラットの脳海馬のDentate Gyrus領域から樹立した成体神経幹細胞培養系で解析し、シグナル因子応答系の影響について評価を行った。疾患状況を引き起こす「外的刺激」に応答してサイトカインの発現を調節する候補遺伝子に対する、濃縮レンチウイルス(過剰発現系、shRNAノックダウン系)を、ラット海馬のDG領域の座標にStreotaxic装置を用いてマイクロインジェクションした。運動+EE(環境エンリッチメント、神経新生・回路機能上昇)もしくは、老齢ラット(神経新生減・機能減退)で、新生ニューロンの変動を指標とする統計的な免疫組織染色解析を行った。さらに、神経細胞への波及効果を調べるために、糖尿病の初期進行過程に即して如実に変化する遺伝子を同時に染色して、分化誘導能力のに比較解析を行った。これらの候補遺伝子のシグナル応答について、幹細胞とグリア細胞や神経マーカーの抗体染色、クロマチン沈降解析などにより、Wnt3発現とIGFBP4発現の制御効果があるものの比較を行い、糖尿病による疾患下で上昇・減少するシグナル応答系、標的遺伝子の同定を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画通りに、疾患動物の作成、組織解析、幹細胞樹立を行い、諸解析が進んでいる。特に糖尿病の進行状態に即した初期段階での神経幹細胞樹立系で、疾患に伴う制御因子の同定を行い、学術論文を投稿し受理された。
|
今後の研究の推進方策 |
糖尿病と鬱病下の神経幹細胞の制御系の諸解析を計画通りに進める。得られた結果は随時学会等で公表したり、学術論文の形にまとめ公表し、積極的に社会にその成果を発信することに努める。特に推進できる事柄として、行動解析機器を初年度に購入することができたので、海馬の機能を行動解析実験で評価し、培養系での分子レベルの評価と、動物個体レベルの機能評価を併せた考察が、今後展開できると考えている。
|