研究領域 | 脳内環境:恒常性維持機構とその破綻 |
研究課題/領域番号 |
24111562
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研究機関 | 独立行政法人国立長寿医療研究センター |
研究代表者 |
高島 明彦 独立行政法人国立長寿医療研究センター, 分子基盤研究部, 部長 (00154774)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | タウ / LTD / AMPA / アルツハイマー病 |
研究実績の概要 |
タウ遺伝子をノックアウトした動物ではシナプス長期増強(LTP)に影響を与えず長期抑圧(LTD)を引き起こすことが出来ないことをこれまでに見いだした。この課題ではまず、タウがシナプス後膜に存在することを生化学的分画法、および電顕で確認した。タウ遺伝子ノックアウトマウス海馬スライスにDHPGを添加するとLTDを誘導できるが、NMDAでは誘導できないことからNMDA依存性LTD誘導にタウが関与することが示された。NMDAによってLTDを誘導するとGSK-3、NMDA受容体に依存するタウリン酸化が確認され、GluA2/PICK1結合の増大が確認された。培養細胞にGluA2,PICK1,タウを発現した再構成系ではリン酸化タウ発現によりGluA2/PICK1の結合増大が観察された。これらのことからリン酸化タウがAMPA受容体の細胞内取り込み機構であるGluA2/PICK1結合を増大させることでシナプスに存在するAMPA受容体数を減らしLTDを引き起こすと考えられた。このことは脳スライスでタウをノックダウンした神経細胞にPHF1部位をAlaに置換したタウを発現してもLTDを回復しないことで電気生理学的にも確認された。更にタウ遺伝子ノックアウトマウスでは野生型と比べてシナプトソーム中のTritonX可溶性画分のAMPA受容体の有意な増大が確認され、タウがAMPA受容体の取り込み機構の関与することを支持した。 LTDによる神経原線維変化形成について病理染色法を用いてLTD誘導後その部位周辺に数個のリン酸化タウ陽性、嗜銀性神経細胞が出現することを確認している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度計画に関して項目1)LTD誘導におけるタウの役割はほぼ終了し論文投稿中である。2)LTD誘導による神経原線維変化形成機構に関しては蓄積したリン酸化タウが凝集体であるのかどうかを生化学的方法、電顕を用いた方法で確認を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度にはLTD誘導による神経原線維変化形成機構を明らかにすることを最優先に行う。 PKMζ阻害剤を用いて記憶におけるLTP, LTDの関係性を明らかにすることを目標にしていたが、これまで信じられて来たPKMζとLTPに関係が無いことが報告されLTP、LTDの老齢期の学習記憶における役割を明確にすることが出来ない状況となった。しかし、これまでの結果からタウ遺伝子ノックアウトマウスはLTDを引き起こさないので学習記憶時の脳活動を野生型と比較することでLTDがどの部位で起きているかを推察することが可能である。これを確認するためにその脳部位に留置電極を埋め込み学習記憶時のフィールド電位を測定することで確認したい。
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