研究領域 | 背景放射で拓く宇宙創成の物理―インフレーションからダークエイジまで― |
研究課題/領域番号 |
24111702
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
高橋 史宜 東北大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (60503878)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 初期宇宙 / 素粒子論 |
研究実績の概要 |
原始密度揺らぎの統計性を調べることによって、その起源に迫ることができる。現在のところもっとも有力な候補はインフラトンの量子揺らぎによるものであり、この場合には非ガウス性はスローロールパラメタで抑制されるために非常に小さく、観測によって検出することが難しい。一方でインフラトン以外の軽いスカラー場の量子揺らぎが原始密度揺らぎを担う場合には、比較的容易に大きな非ガウス性を作ることができる。私は共同研究者とともに、カーバトンと呼ばれるclassの模型について、その密度揺らぎの非ガウス性を正しく求める解析的な方法を構築した。そして、それを応用することによって、ヒルトップ型カーバトン模型において、一般に非ガウス性パラメタタfNLがO(10)になることを示した。また、擬南部ゴールドストンボソンがカーバトンになる模型を考察し、decay constantがGUT scale程度、質量が100TeV以上のmoduliがカーバトンの良い候補となることを示した。特に超弦理論におけるmoduliの虚部分が良い候補としてあげられる。更に、ACT、SPTといった地上における宇宙背景輻射観測実験とWMAP衛星による観測を組み合わせることによって示唆されていたrunning spectral indexを自然に説明するようなカーバトン模型を提唱した。更に、3月21日に発表されたPlanck衛星による精密な宇宙背景輻射の観測結果を受け、ただちにそれがspectator modelに与える示唆について考察を加え論文として発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Planck衛星による宇宙背景輻射観測結果発表へ向けて平成24年度は準備を行なってきた。具体的には、自然にfNLがO(10)となるようなcurvaton modelの構築、暗黒輻射を生成する模型の発見、構築、密度揺らぎのパワースペクトルのスケール依存性に関する研究、において論文をそれぞれ書くなど入念な準備をすることができた。更に、H25年3月21日にあったPlanck衛星観測結果発表を受け、ただちにそれが示唆するspectator field模型への制限を考察し、論文として発表した。このような素早い対応はこれまでの入念な準備に基づくものであり、更に発展した考察を現在共同研究者とともに行なっている。
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今後の研究の推進方策 |
Planck衛星による観測から原始密度揺らぎの起源に関する情報を引き出すべく、これまでの理論的な準備に加え、実データを用いた解析を行うことで、新たな知見を得たいと考えている。特に、暗黒物質とバリオン存在量の間のcoincidence problemから示唆されるparallel worldの模型において、暗黒輻射とsterile neutrinoの存在が予言されている。このような標準宇宙論からの拡張はこれまでのところPlanck teamによって解析されておらず、その詳細な解析は大変重要である。また、非ガウス性に関して得られた非常に厳しい制限について、curvaton模型がどのような状況で満たすことができるのか、特にインフレーション模型や宇宙進化との整合性を総合的に考慮して、模型選別を引き続きおこなっていく予定である。
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