研究領域 | 背景放射で拓く宇宙創成の物理―インフレーションからダークエイジまで― |
研究課題/領域番号 |
24111704
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
松元 亮治 千葉大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (00209660)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 宇宙物理 / 磁気流体力学 / 銀河系 / シミュレーション / 宇宙背景放射 / 天体ダイナモ / 宇宙磁場 / 電波天文学 |
研究実績の概要 |
宇宙マイクロ波背景放射に含まれる偏光成分を抽出するためには地球に到達するまでの空間で放射される前景成分を分離する必要がある。この分離精度を高めるため、我々の銀河系の磁場構造を3次元磁気流体数値実験結果に基づいてモデル化する研究を実施した。 これまで、我々のグループで実施してきた銀河ガス円盤の大局的な3次元磁気流体シミュレーションでは赤道面に関する対称性が仮定されていた。平成24年度にはこの対称性を仮定せず、銀河面の上下を含めたシミュレーションを実施し、初期磁場が赤道面対称な場合でも反対称な双極磁場が形成される場合があること、磁気回転不安定性とパーカー不安定性の相乗作用によって回転周期の10倍程度の時間スケールで方位角磁場方向が反転する準周期的ダイナモが励起されることを示した。また、この計算結果に基づいて地球軌道から観測した場合の全天のファラデー回転度分布を求め、観測される銀河赤道面に関して反対称、銀河中心に関して点対称な分布が再現できることを明らかにした。これらの結果をまとめた論文がAstrophysical Jounal誌に掲載された。 従来のシミュレーションコードよりも高精度な計算が可能なHLLD法に基づく空間5次精度の円筒座標系3次元磁気流体コードを国立天文台計算機等に実装し、従来のコードで得られた磁場反転等の結果を再現できることを確認した。これにより、高解像度計算が可能になった。 前景放射のシンクロトロン放射源となる高エネルギー電子の分布を計算するため、非熱的粒子(宇宙線)成分と、その磁力線方向への拡散を考慮した磁気流体コードを作成し、磁気ループ浮上に非熱的粒子が及ぼす影響を調べた。その結果、非熱的粒子を考慮すると磁場が弱い場合でも磁気ループの浮上が続き、非熱的粒子を考慮しない場合よりも円盤ハローに磁束が流出しやすくなることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
赤道面上下を計算領域に含めた銀河ダイナモの大局的3次元磁気流体シミュレーションを実施し、その結果と全天のファラデー回転度分布を比較した論文を出版することができた。また、より高精度な計算が可能なHLLD法に基づく円筒座標系3次元磁気流体コードを各種計算機に実装して従来のコードで得られた結果を再現することができ、より大規模かつ高精度な計算を実施する準備が整った。非熱的粒子成分を考慮した銀河ダイナモ計算を実施するには至らなかったが、円盤からの磁束流出に非熱的粒子が及ぼす効果を線形解析、非線形磁気流体計算の両面から明らかにすることができ、研究はほぼ順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
非熱的成分を考慮した銀河ダイナモ計算を実施する。まず、円盤の一部を取りだした局所3次元計算を実施して非熱的粒子が円盤ダイナモに及ぼす効果を明らかにした上で、円盤全体を計算領域に含めた大局的な3次元計算を実施する。超新星爆発等による非熱的粒子生成項を含めた計算も実施する。これらの計算結果から、地球軌道から観測した場合の全天のファラデー回転度分布、シンクロトロン放射強度分布を求め、観測と比較することを通して、前景放射モデルを改良していく方針である。
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