宇宙の始まりをプローブできる宇宙マイクロ波背景放射(CMB)のBモード偏光は極めて微細な信号であり、その観測のためには高感度かつ多素子(1000素子規模)の超伝導電波カメラが必要である。そこで、研究代表者は高感度かつ多素子化が容易なMKID(Microwave Kinetic Inductance Detector:超伝導共振器)カメラの開発を行っている。 研究代表者はMKIDを平面アンテナに結合させるデザインを採用しており、集光系にはシリコン製の合成楕円レンズ(半球レンズと平面延長部を組み合わせたもの)を用いている。このとき、レンズの大きさがビームパターンの質やMKID素子の集積度合、及び素子数に効いてくる。 本研究の目的は、MKIDカメラのビームパターン測定系を構築すること、及び、ビームパターンを正確に測定することによってカメラの性能評価を行い、その結果を元にアンテナやレンズデザインの最適化を行うことである。更に、最適化されたデザインを用いてCMB精密観測用地上望遠鏡に搭載するための1000素子規模のMKIDカメラの設計を行うことも目標とする。 これまでの研究において、計算上CMBに対する感度が最適化された、約600素子のMKIDカメラを設計、製作した。また、600素子を同時に読み出す事が可能な読み出し回路の開発も行った。 平成25年度の研究成果として、100mKまで冷却可能な、希釈冷凍機を用いたビームパターン測定系の構築を行い、600素子MKIDカメラの性能評価を行った。また、評価結果を元にアンテナデザイン及びレンズサイズに修正を加え、CMB精密観測用地上望遠鏡に搭載するための約800素子のMKIDカメラの設計を行った。 以上、本研究では当初の目的をおおむね達成することができたと言える。
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