研究領域 | 背景放射で拓く宇宙創成の物理―インフレーションからダークエイジまで― |
研究課題/領域番号 |
24111713
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研究機関 | 独立行政法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
沼澤 健則 独立行政法人物質・材料研究機構, その他部局等, 研究員 (30354319)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 宇宙用冷凍機 / 宇宙背景放射 / センサー冷却 |
研究実績の概要 |
本研究は、宇宙マイクロ波背景放射測定に不可欠な基本技術として、ADR(断熱消磁冷凍)システムを用いた新しい宇宙用冷却技術を提案するものである。本研究で目指すゴールは、これまでのADR技術を再検討し、より広範な宇宙応用を目指して日本におけるADR技術の基盤を確立することである。そのために、我々が開発してきた連続型ADRをリファインし、より高精度な温度制御技術を獲得するとともに、センサー冷却に特化した、シンプ ルなADR冷却システムの可能性を探ることを目的としている。 平成24年度では、ADRの作動に必要とされる要素部品の作製とそれらに対する基本的な試験が実施された。特に熱侵入の最大要因である超電導マグネットのパワーリードの一部をHTC線材で置き換えることによって、大幅な熱侵入量の低減をはかった。また、パワーリードを含む新規技術開発要素を含んだクライオスタットを作製した。熱特性試験の結果、従来のクライオスタットを20%上回る特性向上が達成された。これに熱スイッチを組み込み、スイッチング特性の試験を実施した。また、ADR各ユニットの磁性体を改修した。 平成25年度には、これらの結果をもとに、実際にTESセンサーを組み込み、冷却試験を実施する予定である。また、各磁性体ユ ニットの再設置をはかり、2段、あるいは3段からなるADRシステムとしての冷却特性を調べる。これによって、宇宙用冷却装置としての基盤技術を確立する。以上から得られる結果は積極的に公表する。国内においては低温工学・超電導学会、国際会議においてはCryogenic Engineering Conferenceで発表済あるいは発表を予定している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.高効率クライオスタットの作製:熱侵入の最大要因である超電導マグネットのパワーリードの一部をHTC線材で置き換えることによって、大幅な熱侵入量の低減をはかった。また、パワーリードや除振機構を含む新規技術開発要素を含んだクライオスタットを完成させた。熱特性試験の結果、従来のクライオスタットを20%上回る特性向上が達成された。 2.熱スイッチ:熱スイッチを改良すると共に、性能評価を行った。これによって、ADRの試験運転が可能であることを確認した。 3.磁性体ユニット:磁性体ユニットに改良を加え、絶縁状態などの基本試験を行った。 4.電源等の周辺機器:電源と温度コントローラーを整備し、稼働状態を確認した。 以上の様に、当初の予定通りに計画は進行していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
まず、連続型ADRとしての特性試験とチューニングをはかり、特に温度安定度の高度化を目指す。また、実際にTESセンサーを組み込み、冷却試験を実施する予定である。さらに、各磁性体ユ ニットの再設置をはかり、2段、あるいは3段からなるADRシステムとしての冷却特性を調べる。これによって、宇宙用冷却装置としての基盤技術を確立する。
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