公募研究
宇宙マイクロ波背景放射(CMB)を含む近年の観測にて確立されたビッグバン標準宇宙論は、地平線問題や平坦性問題、また現在の宇宙に存在する大規模構造の起源等の観測事実ついてその答えを提供しない。こうした様々な観測事実を一挙に説明するために、初期宇宙で起きたとされるインフレーション仮説が提唱されている。世界的にこのインフレーション由来の偏光シグナル(B-mode)の発見を目指し、統計誤差及び系統誤差を軽減する次世代観測機器の開発が行われている。本研究にて行った回転波長板を用いた偏光変調器は要求される感度を実現する装置として注目されており、その開発を行った。今年度の開発項目は大きく分けて2つに分かれ、1)変調器のための極低温軸受けのプロトタイプ開発、2)広帯域半波長板の開発、である。動作温度4Kを想定した変調器のための軸受けは高温超伝導体と永久磁石を用いることで非接触式磁気軸受けを採用し、プロトタイプを作成し、評価試験を行った。プロトタイプは極低温下で動作するための保持機構、回転角度を再構築するためのエンコーダー(磁気式及び光学式)、また駆動部によって構成される。動作温度77Kにてそれぞれの動作確認を行い、最大回転速度600RPMの回転を実現した。また偏光角度の再構築は<0.1度以下、また回転エネルギー損失から推定する発熱は<6uWであることを示した。また動作温度4Kにて期待される発熱は<2mW以下であることが期待されることを示した。このプロトタイプは衛星での使用を想定し、保持機構はローンチロック機能を兼ねる。また、半波長板材料の候補であるサファイアはCMBの観測帯域にて表面反射の防止機構が必要となる。レーザー加工を用いたサブ波長による反射防止構造の加工及び評価をサファイア表面にて成功させ、透過特性を評価した。これにより、CMB偏光観測に必要な要素技術の確立を実現した。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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Proc. SPIE 9143, Space Telescopes and Instrumentation 2014: Optical, Infrared, and Millimeter Wave, 91431F (2 August 2014)
巻: 9143 ページ: -
10.1117/12.2055794