研究領域 | 背景放射で拓く宇宙創成の物理―インフレーションからダークエイジまで― |
研究課題/領域番号 |
24111716
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研究機関 | 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構 |
研究代表者 |
吉田 光宏 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 加速器研究施設, 准教授 (60391710)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 宇宙背景放射 / 低雑音増幅器 / 超伝導検出器 |
研究実績の概要 |
宇宙背景放射の偏光分布の渦パターンであるBモードを測定する事は、初期宇宙の非常に高いエネルギースケールの重力波による時空の歪みを検出する有効な手段である。Bモード測定にはシンクロトロン放射などのフォアグランドを差し引く必要があり、60~300GHz程度の広帯域かつ多数の検出器で同時に観測する必要があり、また小型衛星に搭載するのに実装密度と低消費電力の読み出し系が課題である。 衛星搭載用の検出器として、多チャンネル化が容易なMKIDsの開発を行っているが、多重読出しにはMKIDsの共振周波数である数GHz帯の低ノイズの増幅器が必要となる。現状のMKIDsの読み出しにはHEMTが使われているが、ノイズ及び消費電力の点で不足である。本研究では、HEMTに替わる低ノイズかつ消費電力の小さい超伝導マイクロ波増幅器を開発し、MKIDsの開発と併せて多チャンネル読み出しの実証を行う事が目的である。 平成24年度はこのような低雑音増幅器として、SQUID増幅器及びパラメトリック増幅器のシミュレーション等による電気的な設計を行い、パラメトリック増幅器についてはフォトマスクの具体的な設計が完了した。 さらに本研究の最終目標は、このような低雑音増幅器と多チャンネルのMKIDsを組み合わせて実際にMKIDの読み出しの評価系のシステムを構築して、超伝導検出器の総合的な雑音等の評価を行う事が目的である。このための読み出し系用のハードウェア等、評価系の準備を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度は低雑音増幅器である、SQUID増幅器及びパラメトリック増幅器のシミュレーション等による電気的な設計や、パラメトリック増幅器については具体的なフォトマスクが完了した。 さらに本研究の最終目標は、このような低雑音増幅器と多チャンネルのMKIDsを組み合わせて実際にMKIDの読み出しの評価系のシステムを構築して、超伝導検出器の総合的な雑音等の評価を行う事が目的である。このための読み出し系用のハードウェア等、評価系の準備を行っており、研究期間内に低雑音増幅器の開発と、MKIDsの評価系が予定通り完了するよう進めており、おおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
MKIDsの各検出器を構成するマイクロ波共振器のQ値は10^6程度と非常に高く、例えば 100kHz毎に素子を配置できるため、原理的には100MHzの帯域で1000素子の多重化が可能である。従って原理的には1つのHEMT等で2000チャンネルを読み出す事は可能である。しかし現実には、ダイナミックレンジを広く取る事や、マスクの精度で共振周波数にばらつきがある事、また通常使用しているSiウェハーのサイズが3インチであり、素子数は数百ch程度毎に分割した方が良い。既に代表者らは透過型のMKIDsとフィードバック読み出し方式により非常に広いダイナミックレンジの読み出しを実証しており、本研究では、1MHz毎にMKID素子を配置し、300MHzの帯域内に、250素子程度の素子を多重化するための設計を行っている。また10^-18 W/√HzのNEPに到達するにはマイクロ波増幅器の雑音温度を数Kまで下げる必要がある。 従って本研究の超伝導マイクロ波増幅器の要求性能としては、帯域300MHz、雑音温度3K、利得10dBを目標として設計を行う。 既に低雑音増幅器の電気設計や、パラメトリック増幅器に関してはフォトマスクまで完了している。またMKIDsの読み出しの評価系の準備も進めた。 今後は、これらの設計したSQUID増幅器及びパラメトリック増幅器の製作及び評価を行い、実際にMKIDの読み出しの評価系を構築し、雑音等の評価を行う。
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