公募研究
肝発生過程では腸管の一部が心筋・横隔膜からのシグナルにより肝芽に分化誘導され、その肝芽中で肝幹・前駆細胞の分化・増殖が生じる。胆管は胆汁酸の輸送に関わる上皮系管腔であり、肝発生中期から後期にかけて肝幹・前駆細胞の一部がDuctal plateの形成を通して肝内胆管細胞へと分化する。炎症等による肝内胆管の損傷は胆汁酸による肝細胞死を誘導し重篤な肝疾患につながる。また、胆管細胞の機能異常は肝嚢胞などの原因となる。しかし、胆管細胞研究はマウス等の実験動物が中心で、ヒト細胞を用いた胆管病態を再現できる実験系などが存在しなかった。そこでヒトiPS細胞から肝幹・前駆細胞・胆管細胞への分化誘導系を確立することで、ヒト細胞を用いた胆管形成の分子機構の解析を行う。マウス等を用いた実験から、内胚葉系前駆細胞のマーカーとして、CXCR4やE-cadherinなどが同定されている。そこで、ヒトiPS細胞からサイトカイン等の添加により内胚葉系への分化を誘導した後に、これらの細胞表面マーカー陽性細胞を純化する。マイクロアレイを用いた網羅的発現解析や純化細胞をマウス等に免疫しモノクローナル抗体作製を行うことで、ヒト内胚葉系細胞を高度に純化できる系を確立する。現在、ヒトiPS細胞にサイトカイン等を連続的に添加し肝臓系細胞へと分化誘導した後に、肝幹細胞マーカーCD13, CD133の両陽性細胞をフィーダー細胞で培養することで高増殖性の肝幹・前駆細胞を純化・培養することに成功している。この細胞を細胞外マトリクス内でWnt3a等を添加して包埋培養すると、極性を持つ胆管様の上皮管腔構造へと分化することを見出した。
2: おおむね順調に進展している
本年度の研究によって、ヒトiPS細胞から肝幹・前駆細胞様の細胞を経て、胆管細胞へと分化させることに成功した。コラーゲン・ラミニン等のマトリクスゲルに細胞を包埋し、Wntシグナルを活性化させることで、極性をもつ上皮管腔構造の誘導が可能となった。今後、この胆管様構造のCharacterinzeを進めるとともに、in vivoへの移植を検討する。
本年度の研究成果によって、ヒトiPS細胞から胆管様の上皮管腔構造の形成が可能となった。胆管の形成にはさまざまな転写因子やタンパク質が関与することがマウスを用いた研究で明らかとなっている。しかしヒト胆管細胞の発生や機能を制御する因子に関しては未だ不明な点が多い。そこで、患者由来ヒトiPS細胞や遺伝子改変ヒトiPS細胞を用いて、胆管様構造へと分化誘導をおこなうことで、ヒト胆管系を制御する因子の解析・同定を進める予定である
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Hepatology
巻: in press ページ: in press
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