研究領域 | 上皮管腔組織の形成・維持と破綻における極性シグナル制御の分子基盤の確立 |
研究課題/領域番号 |
24112507
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
伊藤 暢 東京大学, 分子細胞生物学研究所, 講師 (50396917)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 可視化 / 再生医学 / 上皮管腔組織 / 胆管 / 3次元組織構造 / 組織幹細胞 |
研究実績の概要 |
本研究では、『上皮管腔組織』のモデルとしてマウス肝臓の胆管系に注目し、我々が独自に開発した新規可視化手法を駆使した種々の解析により、以下の2つの課題にアプローチすることを目的としている: 課題 (1) 正常時および種々の肝障害・再生過程における胆管系の3次元的な形態・動態を、胆管の持つ「管」(管腔構造)および「組織幹細胞プール」の両側面から解析し、記述する。 課題 (2) その背景となる制御メカニズムを、胆管と他の肝臓構成細胞との相互作用の様態と、これを担う細胞間シグナル伝達因子/経路に着目した解析から明らかにする。 平成24年度には、以下のような成果を得た: 課題 (1) 種々のマウス肝障害モデルでの比較を行った結果、障害部位が門脈域である場合、中心静脈域である場合、および、実質域全体である場合で、胆管系がそれぞれ異なる形態変化を示すことを見出した。特に、CCl4の頻回投与やTAA持続投与による障害肝においては、胆管・門脈域から離れた中心静脈域に胆管上皮細胞様の細胞が異所性に出現することが知られていたが、それらの構造・細胞も本来の胆管系と管腔構造として接続されていることを初めて明らかにした。また、障害部位に到達した胆管樹状構造先端付近に、肝幹/前駆細胞マーカー陽性の細胞が存在することも明らかとなった。 課題 (2) 障害肝での肝前駆細胞反応誘導に関わる分子として、これまでにFGF7やTWEAKが報告されている。これらの因子をマウス生体肝臓に強制発現させたところ、胆管系が異なる反応・形態変化を示すことが明らかとなった。さらに、両者を共発現させることで相乗効果を生じることも見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画していた解析を、ほぼ完全に実施し、十分な成果と新たな知見を得ることができた。 課題 (1) で計画していた Cre-loxP システムによる遺伝的細胞系譜解析については、マウスの交配・出産の都合により十分には遂行できなかったが、代替手段として肝幹/前駆細胞マーカーによる免疫染色解析を用いることで、当初の目的に沿うデータを得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究実施計画に沿って推進するが、特に以下の事項については重点的に解析を行う: 課題(1) 障害を受けた中心静脈域での遺伝子発現解析等により、胆管系の進展を誘導する因子の探索・同定を行う。 課題(2) FGF7、TWEAK、および、両者を共発現させた場合で胆管系が異なる反応・形態変化を示すメカニズムの解明を目指す。また、FGF7の発現をモニターできるトランスジェニックマウス系統を樹立し、これを用いることで、FGF7産生細胞と胆管系を同時に可視化・観察することを試みる。
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