研究領域 | 上皮管腔組織の形成・維持と破綻における極性シグナル制御の分子基盤の確立 |
研究課題/領域番号 |
24112509
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
浅岡 洋一 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 助教 (10436644)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 上皮管腔組織 / Hippoシグナル伝達系 / YAP変異メダカ / 蛍光イメージング / 細胞内張力 / 細胞極性 / 細胞移動 / FRET |
研究実績の概要 |
上皮管腔組織は多細胞生物を構成する器官の基盤的構造であり、その形状やサイズの適切な制御は機能的な器官の構築に極めて重要である。ここ数年の研究から、器官サイズ制御シグナルHippo伝達系が上皮管腔組織の構造制御と密接に関連することが明らかとなってきたが、管腔形成の3次元構築を規定する分子メカニズムの詳細は未解明な点が多い。我々はこれまでにHippoシグナルの下流標的因子YAPのメダカ変異体を単離し、この変異体が神経管や血管等の上皮管腔組織の構築と維持の不全という特徴的な表現型を呈することを見出した。そこで本研究では、「メダカYAP変異体における管腔構造崩壊の原因を、①細胞極性②細胞運動性ならびに③細胞張力制御の3つの観点から個体レベルで解明すること」を目的として研究を推進した。今年度は細胞張力の可視化システムの構築に向け、張力のセンサープローブ (VinTS) をメダカ胚に導入し、蛍光タイムラプス顕微鏡により細胞-細胞間張力の組織分布をFRETの蛍光強度の変化として捉えられるか否かを検討した。現在までのところ、期待どおりのFRET 効率が得られていないが、リンカーの種類や長さの変更による改良型張力センサー分子の作製を進行させており、今後FRET 効率の最適化を培養細胞にて検討する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では「メダカYAP変異体における管腔構造崩壊の原因を、①細胞極性②細胞運動性ならびに③細胞張力制御の3つの観点から個体レベルで解明すること」を目的としている。すなわち、可視化技術に適した小型魚類を用いて、Hippoシグナル伝達系が関与する細胞極性・細胞移動とともに細胞間張力をin vivoで解析することを目標とする。これまでに形態形成期のHippoシグナル伝達系が細胞張力制御に関与する可能性を見出しており、この解析を次年度にてさらに推進することにより最終的なマクロスケールの上皮管腔組織構築を個体レベルで理解できると考えている。個体内での細胞内張力の解析にあたり、現在までに一過的な発現系において細胞-細胞間張力の組織分布をFRET 法により検出するための予備実験を遂行した。細胞内張力をFRETの蛍光強度の変化として捉えるための最適化条件を決定するため、改良型張力バイオセンサーの作製などを同時進行で進めている。今後は、YAP 変異メダカの上皮管腔形成過程における細胞極性、細胞移動および細胞張力パターンを総合的に把握したいと考えているが、当初の研究目的はおおむね順調に進行していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度の研究を発展的に継続するとともに、最終年度の総括を行う。 これまでの一過的な発現解析に加え、全身に蛍光プローブを発現したトランスジェニック・メダカをYAP変異体メダカと掛け合わせた解析を行い、全身組織の細胞張力の様式を隈なくタイムラプス観察する。これにより発生期のHippo シグナル伝達系による組織構築とその破綻による組織崩壊の詳細を胚全体において精査する。トランスジェニック動物を作出するうえで考えられる問題点は、高すぎる蛍光のバックグラウンド、あるいは、検出限界以下の弱すぎる蛍光シグナルである。これらの問題点に対処するために、必要に応じてインジェクションする発現ベクター量などの条件検討や、発現量を調節可能な(低発現型、高発現型)プロモータの検討を行う方針である。
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