公募研究
肝前駆細胞が胆管上皮細胞に分化してシストを形成する培養系を用いて、上皮細胞が形成する管腔のサイズ調節機構について解析を行った。肝前駆細胞は、培地に添加しているMatrigelに含まれるlaminin111に依存して上皮細胞極性を形成し管腔形成を開始する。一方で、管腔形成の過程で成体の上皮組織を裏打ちする基底膜の主成分であるlaminin511/521を分泌するようになり、laminin511/521に依存して管腔が成長することを明らかにした。また、laminin111およびlaminin511/521の作用は、インテグリンα6β1を介したものであることも明らかにした。胆管上皮細胞に特異的に発現する転写因子grainyhead-like 2 (Grhl2)による管腔サイズの調節機構について検討を行った。Grhl2は肝前駆細胞にバリア機能を付与するが、その際Claduin-3 (Cldn3)およびCldn4の発現を制御していることが分かっていた。本年度においては、阻害ペプチドを用いてCldn3と4の機能を阻害すると管腔サイズ拡張作用が抑制されることを見出し、Grhl2による管腔拡張にはCldnの機能が必須であることを明らかにした。さらにGrhl2は低分子量Gタンパク質Rab25のプロモーターに作用し、発現を調節していることがわかった。HPPLにRab25を強制発現すると密着結合に局在するCldn4の割合が増えたことから、Rab25はCldn4の密着結合への局在を制御することによって、管腔形成を促進している可能性を明らにした。
2: おおむね順調に進展している
Lamininの組織形成への影響について検討を行い、外因性のlaminin111による極性形成および管腔形成の開始作用と、内因性のlaminin511/521による管腔の成長・成熟化作用があることを明らかにできた。また、Grhl2によるCldn3, Cldn4, Rab25の分子間ネットワーク形成によって、密着結合の成熟化が進むことを明らかにすることができた。一方、当初予定していたin vivoでのGrhl2の機能解析については、今後、積極的に取り組んでいく。
Grhl2の新規ターゲット分子を同定し、管腔形成やチューブ構造形成における機能を明らかにする。また、lamininなどの基底膜成分の他に、FGFやWntなどの液性因子の管腔形成における機能を検討することによって、外部環境による管腔形成の制御についても明らかにする。さらに、Grhl2あるいはそのターゲット分子と、液性因子・細胞外マトリックスによる協調的な管腔形成の促進作用があるかについても検討を行い、上皮細胞による管腔形成・維持の分子機構を明らかにする。
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http://web.sapmed.ac.jp/canpath/Tissue_Regeneration/zu_zhi_zai_sheng_xue_bu_men.html