非再生系組織のような増殖力がきわめて低い組織では、異常細胞の積極的な排除は、組織の縮小に直接つながる。そのため、異常レベルを検出し、深刻な異常をきたした細胞のみを限定的に排除する仕組みが必要である。本研究では、ショウジョウバエ非再生系組織である附属腺をモデルとして用い、異常細胞の検出・排除メカニズムの解明を目的としている。 1) 隣接細胞における細胞非自立的な応答機構:paired遺伝子をノックダウン時(老化を遺伝的に再現)により誘導される異常細胞が組織から排除される際に、排除細胞の周辺細胞でJNKシグナルの活性化と、それに伴うアクチン細胞骨格の発達が観察される。pairedノックダウン細胞のおいてJNKシグナルを抑制により、細胞排除の遅れが観察された。また、limkDNを強制発現し、アクチン細胞骨格重合を抑制した場合も同様の効果が現れた。 2) 異常細胞の検出・排除システムの再現:老化時に活性化するシグナル経路として、Notch・JAK-STAT・Pvrシグナルを同定している。このうち、Pvrシグナルのみが細胞死誘導能を有していたが、その効果は低かった。そこで、Pvr・Notchシグナルの共活性化を試みたところ、高い細胞死誘導能を示した。Pvr・Notchシグナルの共活性化も同様の効果を示した。 3) Pvf2/Pvrシグナルによる異常レベルに応じた細胞排除機構: Pvrシグナルは、Notch・JAK-STATシグナルを介して、pairedレベルの低い細胞 (異常レベルが高い細胞) のみを限定的に排除していると予想できる。そこで、PvrシグナルがPairedレベル依存的に細胞死誘導を行うのか検証した。その結果、paired強制発現時においては、Pvrシグナルは細胞死を誘導しないのに対し、pairedノックダウン時には高頻度に細胞死を誘導した。
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