公募研究
我々は,ヒト臨床検体を用い,腸管上皮幹細胞ならびに大腸がん上皮細胞の3次元培養法(オルガノイド培養)を開発した. 本研究計画では樹立した大腸がんオルガノイドを用いて,上皮細胞の管腔構造形成の異常メカニズムの解明を目的としている.平成24年度は大腸がんの症例数を増やし,様々な臨床ステージの大腸がんのオルガノイド培養を樹立した.また,免疫不全マウスへの異種移植により,in vivoでの管腔形成の評価が可能になった.こうした技術の開発により,ヒト腸管上皮の管腔形成異常をin vitro,in vivoの双方で解析するシステムが確立された.患者由来のがんは症例毎に管腔形成が異なっており,遺伝子変異パターンによる管腔形態制御が示唆された.オルガノイドの遺伝子変異の網羅的解析により,管腔構造形成異常を誘導する遺伝子について解明していきたい.また,ライブイメージングが導入され,1週間程度までのオルガノイドのリアルタイムーメージングを確立した.本技術を利用して,より正確な管腔形成動態が観察可能となった.ウィルスベクタ-などの遺伝子操作技術が向上し,より自由度の高い,オルガノイドの遺伝子操作が可能になった.ヒト正常腸管上皮細胞からの人工大腸がんの誘導,細胞周期・幹細胞の蛍光可視化が実現しつつあり,今後,こうした技術を基に,腸管上皮細胞の時空間的な動態をその制御メカニズムとともに解明していきたい.
2: おおむね順調に進展している
ヒト臨床検体から大腸がんオルガノイドを樹立し,順調に症例数を増やしている.ほぼ全ての症例でオルガノイドが樹立可能であり,その管腔構造形成は症例により多様であった.また,ヒトの大腸上皮の発がん過程における管腔構造形成異常を解析するため,正常腸管上皮細胞に遺伝子変異を導入し,人工的な大腸がんのモデルを構築しつつある.こうたオルガノイドは免疫不全マウスへ異種移植を行い,in vivoにおける管腔形成についても解析している.大腸がんは患者組織標本,オルガノイド構造,異種移植後の組織構造,ともに同様な管腔形成を示しており,現在までに確立した研究システムが腸管上皮の管腔形成異常を解明する上で,有用であることが示唆された.さらに,in vitroにおけるオルガノイドの管腔形成のより詳細な解析を行うため,細胞増殖と同期した蛍光蛋白(FuCCi)をオルガノイドに導入し,細胞周期と管腔形成を同時にライブイメージングする技術基盤を完成させた.また,幹細胞を蛍光蛋白により可視化するためのベクター構築を達成している.こうした技術により,細胞増殖と幹細胞の動態を含めた管腔構造変化の時空間的解析システムが完成しつつある.
現在までに構築してきた基盤技術である,in vitroオルガノイドとin vivo異種移植システムに加えて,次世代シークエンサーによる遺伝子変異解析を行い,管腔形成異常に寄与する遺伝子変異の同定を試みる.また,正常上皮オルガノイドからトランスフォーメーションした人工的な大腸がんモデルを用い,Forward geneticsを用いた管腔形成異常を制御する遺伝子の機能を解明したい.幹細胞と細胞増殖動態の蛍光蛋白による可視化とオルガノイド管腔形成のライブイメージングを統合し,正常上皮と大腸がんの管腔形成の時空間的変化を数理学的に解析したい.
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