研究領域 | 上皮管腔組織の形成・維持と破綻における極性シグナル制御の分子基盤の確立 |
研究課題/領域番号 |
24112525
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研究機関 | 京都産業大学 |
研究代表者 |
中村 暢宏 京都産業大学, 公私立大学の部局等, 教授 (50294955)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | ゴルジ体 / リン酸化 / βカテニン |
研究実績の概要 |
1. GRASP65によるゴルジ体リモデリングとゴルジバイパス輸送経路の調節機構の解析 イヌ腎臓尿細管上皮細胞(MDCK)が単層上皮構造を形成し,極性を持つようになる際,GRASP65が細胞膜に移動するとの予備実験結果の確認を行った。Ser277リン酸化GRASP65特異的抗体を用いた免疫蛍光染色で,細胞膜直下に有意なシグナルを認めた。一方,同じ抗体を用いたウエスタンブロッティングでは,60~70kDaには弱いシグナルしか観察されず,単層上皮構造形成に伴っての有意な増加も見られなかった。一方,~100kDaにブロードなバンドが確認され,単層上皮構造形成に伴って増加する傾向が見られた。意外なことに,共同研究者との共同解析によって,この~100kDaのバンドがβカテニンであることが確認された。以上の結果から,予備的実験結果で予想されたGRASP65の細胞膜への移動は,抗体のβカテニンとの交差反応による誤認であることが強く示唆された。 2. In vitro cyst形成実験 MDCKおよびヒト気管支上皮細胞(16HBE14o-)を用いて,cystを形成させる実験を行った。報告されている実験条件での培養を行ったところ,cyst用の構造を形成させることに成功したが,cystの形成が不安定であり,実験条件の調整が必要であることが明らかとなった。 3. Zebrafish原腸貫入・神経管形成・血管形成の撹乱実験 まず,GARASP65に対するモルフォリノオリゴを導入したが,現在までのところ,発生4日までコントロールと比較して異常が見られなかった。一方,GM130に対するモルフォリノオリゴを導入したところ,受精12時間後の尾芽胚時期までは有意な異常を認めなかったが,受精12~20時間後の体節形成期に頭部と尾部の形成異常が確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究はほぼ計画通りに遂行することができたが,GASP65キナーゼの同定とcyst形成実験については,予定していた研究担当学生の就職活動の長期化等により予定より多少の遅延があった。以上のことを勘案して,上記の達成度と評価した。
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今後の研究の推進方策 |
Ser277リン酸化GRASP65抗体はβカテニンと交差反応することが明らかとなった。この結果は,Ser277リン酸化GRASP65とβカテニン(おそらくリン酸化されているものと考えられる)が類似のエピトープを持つ事を示唆している。この結果は,我々がその存在を予想しているSer277リン酸化GRASP65のSer277に結合タンパク質が,βカテニンにも結合することを示唆しており大変興味深く,次年度はこの可能性にも注目して研究を進める。一方,GRASP65の細胞膜への移動の証拠が失われたため,ゴルジバイパス輸送経路の調節機構の解析は重点項目からはずすことに決定した。予期せぬ実験結果によって今後の実験計画の軌道修正が必要となったが,今回の実験結果は予測の範囲であり,3つのアプローチから研究をすすめる本件研究課題にとって,致命的なものではない。次年度に残りの2つのアプローチに集中することで研究の進展を図る。 GARASP65に対するモルフォリノオリゴを導入したが,現在までのところ,発生4日までコントロールと比較して異常が見られなかった。したがって,次年度はGRASP55との組み合わせなどで,異常がみられないか検証を行う。 GM130に対するモルフォリノオリゴを導入で,原腸貫入に異常が現れるかどうか検証を行う。
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