研究領域 | 上皮管腔組織の形成・維持と破綻における極性シグナル制御の分子基盤の確立 |
研究課題/領域番号 |
24112528
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研究機関 | 独立行政法人国立長寿医療研究センター |
研究代表者 |
山越 貴水 独立行政法人国立長寿医療研究センター, 老化機構研究部, 室長 (50423398)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 顎下腺 / Bmi-1 / p16 / 成体幹細胞 / 加齢 |
研究実績の概要 |
ポリコーム遺伝子群の一つであるBmi-1は成体幹細胞の機能維持や再生において非常に重要な役割を果たしていることが示されてきた。そのため、Bmi-1機能の変化は成体幹細胞の質的・量的な低下を引き起こし、老化関連疾患の発症に深く関与することが予想される。しかしながら、これまで、Bmi-1が生体内のどこの組織幹細胞をどのようにして維持・再生しているかについては殆ど明らかとなっていない。Bmi-1の直接の標的分子として知られるp16の発現は、加齢とともに多くの組織において上昇し、老化の進行や老化関連疾患に深く関与すると考えられている。我々は、加齢過程におけるBmi-1/p16制御経路の役割を明らかにするために、Bmi-1遺伝子存在下あるいは非存在下でp16のin vivo イメージングを行った。その結果、Bmi-1がないと顎下腺組織においてp16の発現が著しく亢進し、また、唾液分泌量が顕著に減少することが分かった。興味深いことに、野生型マウスが自然に加齢した場合においても同様の現象が認められた。そこで、加齢過程における顎下腺組織幹/前駆細胞の機能を解析したところ、老齢マウス由来の幹細胞は若齢マウスに比べ著しい機能低下を示し、しかも若齢マウス由来の顎下腺組織幹/前駆細胞にp16を強制発現させると速やかな機能低下を生じた。これらの結果から、Bmi-1/p16制御経路の異常は加齢に伴う顎下腺機能低下の主たる原因の一つであることが示唆される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、加齢による顎下腺機能低下のメカニズムを明らかにしようとしている。本年度、in vitro顎下腺幹/前駆細胞モデルや免疫組織化学的解析手法を用いてBmi-1遺伝子欠損マウスや加齢マウスの顎下腺幹/前駆細胞でp16の発現が亢進していることを明らかにすることが出来た。また、若齢マウス由来の顎下腺細胞にp16を強制発現させると分化能力、増殖能力や自己複製能が速やかに低下することをも明らかにすることが出来た。以上の理由から、研究目的・研究実施計画に沿った研究の成果が得られているため、研究は順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後、これまでに得た研究成果に基づき、一体何故、加齢によりBmi-1/p16経路が破綻するのか、そのメカニズムの解明に取り組む。また、p16はサイクリン依存性キナーゼ(CDK)4/6と結合することにより、E2Fの制御因子であるRB蛋白質を活性化する機能を有することが知られている。我々は既に、加齢マウスの顎下腺幹/前駆細胞ではRBが活性化されていることを示す結果を得ている。そこで、Rb/E2Fの下流で働き、顎下腺幹/前駆細胞の機能維持に直接関わる因子をマイクロアレイ解析により同定することを試みる。
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