研究実績の概要 |
精子先体膜タンパク質エクアトリン (Eqtn)は、精子が最終的な授精能を獲得する段階でその局在と分子サイズを変化させる。電顕的免疫金法を含む分子細胞学的解析の結果から、エクアトリンが存在する周囲の微細構造(基質物質)との関係を示唆するデータを得た。膜融合準備段階から頭部進入過程(卵活性化)におけるエクアトリン分子変化の意義について総説した(J Electron Microsc,2012)。研究期間中に他のグループから、SPESP1の欠損(KO)マウス精子ではエクアトリンが増えることが示されたため、エクアトリンとSPESP1との関係を解析中である。GalNAc糖転移酵素Galnt3欠損精子を解析した結果、エクアトリン配列138スレオニンから分岐するMN9抗体に対するエピトープ部の糖鎖がO-グリコシレーションされて伸びるためにはGalnt3糖転移酵素が必要であり、GlcNAcbeta1-3-GalNAcarfa1-Ser/Thr構造を持つことを共同して発見した(Histochem Cell Biol, 2013)。超顕微鏡の一つであるSTED方式を用いてEqtn-EGFPトランスジェニック(Tg)マウス精子先体膜系が切片にしないまま可視化されることを世界で初めて示し、また電顕的免疫金法と超顕微鏡STEDを併用して精子形成過程におけるエクアトリンの先体への配備過程を明らかにした (Cell Tissue Res, 2013)。受精中のエクアトリンは精子CD9やIzumo1に比較して、先体膜に安定して残りながら卵形質内に取り込まれることが分かった。現在、EQT-EGFP TgやCD9-EGFP Tgを用いてさらに詳細に解析中である。Eqtn-KOホモマウスについて次世代シークエンスのデータを得て解析中である。
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