公募研究
動植物を問わず多くの生物の受精時において、精子(雄性配偶子)は卵(雌性配偶子)から分泌される物質に対して走化性を示す。この卵に対する精子走化性現象は、体外受精をする多くの動物門において種特異的な反応であることが知られており、精子が最初に同種の卵を認識する分子認証システムである。さらに、この同種の卵を見いだした精子は走化性運動により卵へと誘導され、受精の確率を高めるシステムとして非常に興味深いシステムである。しかし、精子誘引物質に関しては一部の種で同定されているものの、精子-卵由来物質間の分子認証システムについてはまだほとんど何も分かっていないのが現状である。本研究では、精子誘引物質が同定され、その受容体の解明も進んでいるカタユウレイボヤでの成果を土台として、精子がどのように同種の卵由来の物質を認証し、卵の位置を特定し、精子運動制御をしているかを解明することを目的とする。今年度は、新たにカタユウレイボヤの近縁種であるスジキレボヤの精子誘引物質As-SAAFを同定した。さらにPhallusia mammillataの精子誘引物質Pm-SAAFについても精製を進めている。これにより、既知のカタユウレイボヤ精子誘引物質Ci-SAAFと分子構造を比較することで、精子走化性の分子認証は、ステロイド骨格につながるOH基の部位のみで決定されていることが明らかとなった。さらに、今年度は魚類における精子と卵の分子認証システムの基礎研究も開始し、クサフグおよびチョウザメについて基礎的な精子運動調節機構に関する知見を得ることに成功した。
2: おおむね順調に進展している
ホヤの精子-卵の認証機構については、Phallusia精子誘引物質の精製・同定作業についてホヤの生育・採集状況の問題から一部遅延があり、3ヶ月間の年度繰り越しとなったが、それ以外についてはほぼとうしょのもくろみ通りの進展となっている。
繰り越しを行った都合上、本報告書提出の際には本研究が終了している。2014年度当初は、2013年度の成果を踏まえて成果を一年でとりまとめるべく、論文作成のためのツメの実験を中心に行うことを目標とした。
すべて 2013 2012 その他
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (9件) (うち招待講演 1件) 備考 (2件)
Organic Letters
巻: 15 ページ: 294-297
doi: 10.1021/ol303172n
Developmental Biology
巻: 367 ページ: 208-215
doi: 10.1016/j.ydbio.2012.05.011
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