研究領域 | 動植物に共通するアロ認証機構の解明 |
研究課題/領域番号 |
24112711
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
掛田 克行 三重大学, 生物資源学研究科, 教授 (50221867)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 自家不和合性 / オオムギ野生種 / 自他認識機構 |
研究実績の概要 |
オオムギ野生種(H. bulbosum)のS1およびS3ハプロタイプ(ホモ型)の成熟花粉を用いて,トランスクリプトーム解析およびプロテオーム解析を実施した.トランスクリプトーム解析では,S1およびS3ハプロタイプのS遺伝子座周辺ゲノム領域のシーケンスをデータベースとしてBlast解析したところ、これまでに予測されていない新規な遺伝子が花粉で発現していることが明らかとなった.また、花粉のプロテオーム解析では,上記のトランスクリプトームをデータベースとしてMASCOTサーチを行ったところ,S1またはS3ハプロタイプの花粉に特異的なタンパク質が多数同定された.これらの中から,Sハプロタイプ特異的な遺伝子をスクリーニングすることで,花粉側S遺伝子候補の単離につながると期待された. 雌ずい側S遺伝子候補(HPS10)の機能証明のため,組換えHPS10タンパク質を用いたin vitro花粉バイオアッセイを行い,HPS10のSハプロタイプ特異的な花粉阻害効果を示すデータが得られた.さらに,HPS10タンパク質内の様々な部位から合成した10残基程度のペプチドを用いたバイオアッセイの結果から,自家不和合性の自他認識に関与する候補領域が示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究開始時に,オオムギ野生種の雌ずい側S遺伝子の有力候補であったHPS10遺伝子に関して,新たに開発したin vitroバイオアッセイ法によって,S特異性決定因子であることがほぼ証明できた.最終年度内に,最終確認データを取った後,新規な自家不和合性因子の発見として,論文公表する予定である.また,未知の花粉側S遺伝子について,新たに実施した花粉トランスクリプトーム解析およびプロテオーム解析によって,候補遺伝子を絞り込む段階に到達できる見込みである.これらの研究成果は,これまで単子葉植物では未同定であった新規な自家不和合性因子の発見として,大きなインパクトをもつと自己評価している.さらに,こうした研究の進展は,本新学術領域代表の澤田教授をはじめ,領域内の共同研究機関各位の多大な協力なしにはあり得なかった.本領域内の動物と植物の異分野の研究者間の交流が本研究の発展に大きく貢献したことを実感しており,それが当初の計画以上に進展した1つの大きな理由であると考えている.
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今後の研究の推進方策 |
1. 花粉側S遺伝子の単離と同定:花粉トランスクリプトーム解析およびプロテオーム解析において単離した花粉側S遺伝子候補について,花粉での発現特異性,推定アミノ酸配列のハプロタイプ間多型性,S遺伝子座との完全連鎖を基準として,候補遺伝子の絞り込みを行う.さらに,絞り込まれた候補遺伝子について,遺伝子産物の機能予測,後述の雌ずい側S因子(HPS10)との相互作用,自家和合性のオオムギ栽培種(H. vulgare)におけるオルソログの単離と遺伝子変異解析などを行い,花粉側S遺伝子としての妥当性を評価する. 2. 雌ずい側S遺伝子(HPS10)の機能証明:組換えHPS10タンパク質に加え,タンパク質内の様々な部位から合成したペプチドを用いて,in vitroバイオアッセイを行い,HPS10の機能証明ならびに自他認識関与領域の同定を行う.また,雌ずい側S因子が分泌性タンパク質であることを実証するため,各種抗体を用いたウェスタンブロット解析により,in vitroバイオアッセイの培地中にHPS10タンパク質が滲出することを明らかにする.これらの実験から得られたHPS10タンパク質の特性と,従来の遺伝子レベルでの解析結果とを総合し,最終的にHPS10が雌ずい側S決定因子であることを立証する.
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