公募研究
単細胞接合藻類ヒメミカヅキモは、遺伝子導入による形質転換系が確立し、ゲノム情報も利用できるモデル植物細胞としての特性を持つ。この種では、遺伝的に異なる+、-型細胞の間で容易に有性生殖を行い、接合子を形成する。これまでの研究により、有性生殖過程の成立に必要な性フェロモンを介した細胞間コミュニケーションの実体が示され、さらに接合型特異的ないくつかの遺伝子群が単離されている。本研究では、これまでに明らかにした接合型特異的な遺伝子群に加えて、RNAseq、プロテオミクスなどを駆使して、接合時のアロ認証に関わると思われる遺伝子群を単離し、配偶子間認識、融合における役割を形質転換体作出、表現型解析を通して明らかにすることを目的としている。本年度は、以下の解析を進めた。ヒメミカヅキモの栄養増殖期(+型、-型それぞれ)、性分化期(+型、-型それぞれ)、有性生殖初中期、 後期、接合子発芽期の計7種からRNAを調製した。これらを、Illumina HiSeq2000を用いたtranscriptome解析に供した。現在、解析結果を待っている。ヒメミカヅキモの内在性高発現プロモーター(CpHSP70)下流にCpRLK1遺伝子をアンチセンス方向に挿入したコンストラクトを作製し、ヒメミカヅキモへ遺伝子導入した。現在、ハイグロマイシン耐性遺伝子による耐性株確立を進めている。これまでのところで確立された形質転換体系統株の数は多くないものの、定性的、定量的な評価に耐えうるまでになりつつある。Con A結合タンパク質を含む画分を、細胞破砕・調製し、SDS-PAGEで展開したが、現在までに特異的なバンドを検出出来ていない。
3: やや遅れている
RNAseq比較による新規遺伝子の同定については、 ヒメミカヅキモの生活環各ステージ(計7種)からRNAを調製することは出来ている。現時点では、Illumina HiSeq2000を用いた解析結果を待っているところであり、これについては概ね順調である。CpRLK1遺伝子の発現抑制変異株の作出については、ほぼ予定通り進んでいる。Concanavalin A結合タンパク質の粗精製は難航しており、やや計画が遅れている。FITC標識Con Aを用いて生細胞で検出する場合と、破砕した細胞画分をSDS-PAGEで展開して検出する場合では、Con Aの反応性が大きく異なるためと考えられる。
Illumina HiSeq2000を用いたtranscriptome解析を進め、それぞれの接合型特異的に発現する、あるいは有性生殖期に特異的に発現する遺伝子を見出し、さらに細胞膜または細胞外に分泌されると予測されるものを絞り込み、定量PCR法にて確認を行う。ヒメミカヅキモの内在性高発現プロモーター(CpHSP70)下流に候補遺伝子群をアンチセンス方向に挿入したコンストラクトを作製し、ヒメミカヅキモへ遺伝子導入する。得られた形質転換株について、有性生殖過程、性フェロモンへの反応性、相手細胞の認識、細胞融合などに対する影響を詳細に調べる。ヒメミカヅキモの有性生殖期に発現する受容体型キナーゼであるCpRLK1については、確立された形質転換体を用いて、逆遺伝学的手法による表現型を解析する。
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