研究領域 | 動植物に共通するアロ認証機構の解明 |
研究課題/領域番号 |
24112714
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研究機関 | 京都産業大学 |
研究代表者 |
佐藤 賢一 京都産業大学, 公私立大学の部局等, 教授 (30235337)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 受精 / アロ認証 / 配偶子間相互作用 / 膜マイクロドメイン / シグナル伝達 |
研究実績の概要 |
未受精卵(MII oocytes/unfertilized eggs)から調製した膜マイクロドメイン(MD)に精子やカテプシンBを添加するとSrcの活性化やuroplakin IIIaのリン酸化、およびセルフリー未受精卵抽出液における細胞周期の再開といった受精に伴うシグナル伝達反応が誘導される。未成熟卵母細胞(GV oocytes)から調製したMDではこの受精シグナル伝達反応の試験管内再構成ができないことが明らかとなった。わたしたちはこれまでに精子受容体の候補分子であるuroplakin IIIaの卵表層における発現状態が、未成熟卵母細胞とインビトロでプロゲステロン処理を受けた成熟卵母細胞あるいは生体ホルモン処理により成熟・排卵された未受精卵とのあいだで異なることを明らかにしている。このことが上記の卵成熟前後でのMD機能の変化に関係している可能性がある。 卵細胞膜タンパク質(MD局在タンパク質を含む)を抗原とするラットモノクローナル抗体ライブラリを作成し、未受精卵の表層および卵細胞から可溶化された特定の卵タンパク質に対する特異的結合性をもつ抗体クローンのスクリーニングを行った。その結果、10種類程度の抗体クローンが選抜された(上図は間接蛍光抗体法による抗体の卵表層への結合の様子を示す)。今後これらの抗体クローンの標的タンパク質の分子同定や抗体が結合することによる卵細胞の機能の変化(受精阻害あるいは精子非依存的な卵活性化の誘導等)を検証する。また前述の実験結果を受けて、MDプロテオームの卵成熟に伴う変化や未受精卵MDにおける動物極と植物極プロテオームの違いを2次元電気泳動法により明らかにするための実験を行いつつある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
卵細胞の膜マイクロドメインに存在する既知のタンパク質(UPIIIおよびSrc)の機能解析が進み「膜マイクロドメインは受精成立の場として機能する」という仮説の検証が進んでいる。また、プロテオミクス的手法により、新規の受精関連分子の同定も順調に進みつつあり、新たな分子ネットワークの存在を示唆できる段階にきている。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究成果と研究状況をふまえ、受精・アロ認証に伴う配偶子間相互作用すなわち精子と卵の細胞膜レベルの接着および融合の分子メカニズムと生理的意義を明らかにする。これまでに卵細胞膜マイクロドメインに着目した研究から精子受容体候補分子としてウロプラキンIII(UPIII)、卵内シグナル伝達分子としてチロシンキナーゼSrcの分子同定および機能解析をおこなってきた。その研究成果を活用した発展的な分子標的解析をおこなうことを一つ目の具体的課題とする。また、新規アロ認証関連分子の同定と機能解析を二つ目の具体的課題とする。 アフリカツメガエル卵のUPIIIおよびSrcの分子機能に着目した分子標的解析として、以下をおこなう。1)卵形成および卵成熟に伴うUPIIIのタンパク質発現、細胞内局在、および相互作用因子の解析、2)未成熟卵母細胞および未受精卵におけるUPIIIおよびSrcの機能的相互作用の比較解析、3)Srcの新規チロシンリン酸化基質タンパク質の同定と機能解析。また新規アロ認証関連分子の同定と機能解析として,以下をおこなう。1)モノクローナル抗体ライブラリの作成と利用、2)卵細胞表層の極性の解析、3)卵成熟および受精に伴うMD構成タンパク質の量的・質的変化の解析。
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